人口は約5万人。パチンコ店は300台前後の小型店が5店舗ある。
この小野市が一躍全国にその名を轟かせたのが「福祉給付制度適正化条例案」を市議会に提出したことだ。
周知のように、これは生活保護費や児童扶養手当をパチンコや競輪、競馬などのギャンブルに浪費することを禁じる条例で、受給者がパチンコなどをしているのを見つけたら市民は通報する義務があるというものだ。
条例案は3月27日に可決される見通しで、市は4月1日からの施行を目指している。ちなみに、小野市での受給者は生活保護費120世帯、児童扶養手当420世帯、となっている。
全国でも生活保護費の需給率が突出して高い大阪市西成区は、世帯の3分の1超の約2万6000世帯にのぼる。
ちなみに、西成区の総人口は12万人で、パチンコ店は18軒。小野市の人口比率からすると生活保護受給者もホール軒数も多い。
小野市で生活保護を受けている軒数は、大阪・西成区の比ではない。
西成が全国自治体からの姥捨て山的地域に指定されている面もあるが、大阪市で同様の条例が施行された場合、現地のホールはどう受け止めるのだろうか?
「生活保護費を現物支給する、という案もありますが、西成でそんな条例が制定されたら暴動が起きるかも知れない。一般人が思っていることは、不正受給を失くして欲しい、ということではないでしょうか。生活保護費を減額する案もありますが、本当に必要な人には満額でもいい。生活保護費をパチンコ代に使ってはいけない、というのはもちろん分かるが、いちいち生活保護費をもらっているお客さんかどうか、チェックすることは人権問題にもなる。生活保護費でパチンコするのは、もらう側の意識でしかない」と手の打ち様はない、といったところだ。
生活保護費が支給される毎月1日は、西成区のホールでは稼働率が普段より1.5~2倍にアップするケースが少なくない。
それは最長で1週間ほどは続く。
「生活保護のお客さんを相手にしているわけではありません。ギャンブルに浪費させたくないというのであれば、現物支給しかありません。そうなると、生活保護のお客さん以外をホールもこれからは開拓する努力が必要です」
この生活保護費問題は、奥が深い。
パチンコは浪費とみなされて問題視されるが、生活保護を受けている人は医療費がただになるため、西成区で開業している病院は、生活保護受給者が最大の上客となっているのもある種の問題だ。
医療費がただなので、気軽に病院へ行けることを付け込んで、病院は必要のない医療行為までやって保険点数を荒稼ぎしている。
生活保護受給者によって、パチンコ店と同じように儲かっているのが病院なのだが、こっちはあまり問題視されない。
生活保護費とパチンコの話に戻ろう。
西成区在住のAさんは、生活が困窮して生活保護の申請に行く直前の状態まで追い詰められた。
知り合いは生活保護を受けて、13万円支給される生活保護費から、5万円の家賃を払い、生活している。13万円だけでは生活できないので、アルバイトをしている、という。
しかし、Aさんは生活保護を申請することを寸前のところで思いとどまった。
今は亡き母親から「世間に迷惑をかけないで、自分の力で生きなさい」という言葉を思い出したからである。
生活保護は国の税金であり、市民の血と汗である。
「生活保護を受けている人の中には、いい人もあれば、悪い人もいる。いい人はポイ捨てをしない、道端の花に水をやる、道を譲る、学童には優しい言葉をかける。これは生活保護を受ける人の最低限のマナーだと思う。この最低限のマナーがなければ、国や市民に対して申し訳ない。生活保護とは国民の情け」(Aさん)
Aさん曰く、「パチンコは悲しいからする。嬉しかったら、パチンコなんかしないで旅行に行く。生活が大変なのに、生活保護費の中からパチンコをするのは、ちょっとでも儲けて、美味しいものを食べたい、酒でも飲みたいと思うからパチンコをする。私がホール経営者なら逆に生活保護費の支給日に小遣いをあげたいぐらいだ」
年金制度を国が浪費して破綻させた問題の責任は誰も取らない。

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