まずは、タクシーという密室空間での会話だ。
銀座で年配客2人を乗せた。銀座で飲んで帰る先は、横浜経由の最終目的地は相模原市だ。深夜料金を含めると3万円コースに心の中で「ラッキー」と思わず叫んでしまった。
2人の会話から遊技機メーカーの関係者であることが分かった。10年後は上場メーカーだって業績は半分以下になるなどの話をしていた。
ふいにドライバーに「運転手さんはパチンコはやるの?」と声を掛けてきた。
30代のドライバーは「やったことないですね」と答えた。
「確かに5~6万円持っていないと安心して打てないからね」と遊技機メーカーと思われる客は応じた。
この金額を聞くだけで庶民の娯楽とは大きくかけ離れていることが分かるが、業界人の金銭感覚は茹でガエル状態になっているから、この5~6万円という金額に不感症となっているから、どんどん世間とずれていく。
1回の投資額が5~6万円といえば、サラリーマンの小遣いよりもはるかに多い。サラリーマンの姿がどんどん消えていくわけだ。
「ホールは日銭が入るからいいけど、メーカーはそういうわけにはいかない。ヒット機をコンスタントに出さなければ潰れる。メーカーが潰れないようにするためには、大改革が必要だが、どんなにいい機械を出しても、ホールが全部台無しにする。昔は釘の技術があったが、今は閉めるだけで機械を活かす能力がないホールばっかり。それをメーカーに責任転嫁する」と愚痴ったところで1人は横浜で降りた。
ここからもう一人の独演会が始まった。
業界のスキャンダル話になった。
「年間500台買ってくれたら、2000万円のキックバックをしているメーカーがある。1000万円のキックバックより、2000万円という大きな山を作ってその目標台数が500台だった。会社は経費は出すから、売れ、売れと発破をかけていた。それで私腹を肥やしていたことがバレて首になった人もいる」
相模原の目的地に到着するとそこは大豪邸だった。
2つ目はタクシードライバーが競馬で200万円勝った時の話。ゴルフでホールインワン達成者が仲間に記念品を配る感覚で、1人3000円の記念品を配った。
それが「パチンコ必勝の教科書」だった。どうしてこれを選んだのか? 半分はシャレだが、ドライバーの顧客が攻略会社の社長だった縁から、「たくさん余っているからくれてやるよ」と相成った。
社長は攻略本が売れなくなった理由を次のように分析していた。
「パチンコをやるバカが減ったから売れなくなった。昔はバカがたくさんいたから売れた。オカルト情報だってバカが買った。3000万人いたファンが今は700万人。2300万人はバカだったということ」
それも一理あるだろうが、カネがかかり過ぎることが一番の原因だろう。

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