パチンコ日報

ニュースにならないニュースの宝庫 

第3話 漂流者 ⑧

ソバージュの女

僕は主任に怒られた後、ふてくされながら開店を迎える。いつもどおりのことをやったら朝はそんなに忙しくない。開店作業が済むと自販機のネスカフェコーヒーに80円を入れ、砂糖とミルクの増量ボタンを押し、出てきた紙コップを持ってホールのほぼ中央に位置する通路に向かって歩き出す。

全くやる気のない素振りで壁に寄りかかり、ボオっと突立っていると目の前を見知らぬ女性が素通りしていった。顔を見ることはできなかったが、後ろ姿がやけに色っぽかった。

肩まで伸びたソバージュはここら辺では見ることのない、ナウいヘアースタイルだからだろうか。丈がひざ下までのスリムな黒いタイトスカートのせいだろうか。ぱちんこをするお客は結構ラフな格好で来るのにこの女性客は妙にきちんとしている。

僕はだらしなく口をぽかぁんと開け、視線は後ろ姿と言ってもほとんどそのお尻を追っていた。

ソバージュの彼女はゼロタイガーのコースに足を運び、すうっとある台に座った。僕は乱れていない椅子を整理するふりをしながら彼女の方へと近づいてみる。ぷうんとシャンプーの匂いが鼻をくすぐる。直視するわけにも行かなかったのではっきり見たわけではないが厚化粧を差し引いてもなかなかの美人だったように思える。中年女性でもあんな感じだったらいいかな、なんてとりとめもない妄想をしながら彼女の後ろを通り過ぎた。

「坂井さん、何をそんなにニヤケてるんでげすか。それじゃあ、そこらあたりの中年オヤジとおんなじでげす。みっともない」

木村くんは何故こうも僕の心を読み取るのが的確なのかと僕は苦笑いをする。
 
いつも変わり映えしないぱちんこの仕事は僕の感性を麻痺させる。そこには自己成長も感動もほとんどない。だからなのか、見知らぬ客が店に入りしかもそれが色っぽい女性となればちょっとだけ嬉しい気分になる。

コーヒーを飲み干し、タバコを吸ってホールをぐるりと廻ればあっという間に一時間がすぎる。僕はもといた通路の壁際に寄りかかりこの日二本目の煙草に火をつける。そこでなにかの違和感を感じた。

「あの女性は躊躇なく台に座った。普通ならば釘が読めなくても台選びには多少なりとも時間をかけるはず」

もしや、と思いソバージュの彼女が座っている台の番号を確かめた。

「やっぱり」

今日役物に細工をした508番台だ。僕はさりげなく彼女の後ろを通る。気のせいかもしれないが機械のガラスの反射で映る彼女の目と視線があったような気がした。僕はそれに気づかぬふりをしながら足早にその場を去った。

「おかしい」とつぶやいてみる。

彼女の座った508番台は開店1時間と経っていないのに既に玉を持っている。緑色の塩化ビニール製の玉箱にはギッチリ詰めれば玉が1000個は入る。それを既に3箱持っているのだ。3000個が一時間で出るほどうちの店は甘くない。

「今日細工したことが原因か」と不安になり主任に確かめるべく僕は事務所の戸を叩いた。

事務所には店長のカルティは不在で主任だけがいた。カルティの椅子にふんぞり返ってショートピースを吸っていた主任を見定める。

「主任、508番台なんですが」と思い切って尋ねると

「いいから黙っとけ。余計なこと言うなよ。後で教えっから」

それだけ言うと煙草の火を消し居眠りを決め込んだ。

僕は仕方なしに事務所を後にするしかない。ブツブツ言いながらそれでもあのソバージュが気になり508番台まで行ってみる。あろうことかその台に座っているはずの彼女がいない。カウンターに行き『連獅子』こと松本さんに聞いてみるとたった今ジェットカウンターに玉を流し店の外に出ていった、ということだ。

僕の疑問と不安は更に膨れ上がる。なぜ彼女は4000個で打ち止めになる台を打ち止め寸前でやめて帰っていったのか。しかも換金所にもその姿は既にない。ということは換金をしていないということになる。

普通のお客さんは打ち止めにしたら我が物顔でその玉をカウンターのジェットカウンターに流し込み、お金と交換できる特殊景品とその玉を交換し、真っ先に換金所にいくのに。ぱちんこの醍醐味とも言えるその二つの行為を彼女はすることなくさっさと帰っていったのである。今日の工作と主任とソバージュは絶対に関係している。僕は確信した。これはゴトだ、と。
 
結局その日、主任は僕に何も教えてくれなかった。それどころか僕を見向きもしない。デンジャラスなアンダーグラウンドの世界に足を突っ込むことを自分の意志で決めた僕ではあるが、何かひとつしっくりこない。事の真相を知らず、ただ親分のいいなりになって小間使いよろしくヘコヘコしている僕に一体どんな存在価値があるのだろうか。これから先が思いやられるじゃないか。


つづく


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オンラインカジノで4630万円全額スッたこととパチンコは関係ない!

5月19日のワイドショーは、山口県阿武町の4630万円の誤送金問題で萩署が田口翔容疑者を電子計算機使用詐欺容疑で逮捕した件で一色となった。4月8日に誤送金が発覚して、わずか11日間で全額をオンラインカジノに出金していたことが明らかになり、世間を驚かせた。パチンコでこれだけの額を負けることはできないので、オンラインとは言えカジノの怖さが浮き彫りになると共に、ギャンブルのイメージをさらに悪化させた。

萩署が逮捕する前、田口容疑者は全額をオンラインカジノに使ってもう戻せない、との発言をしていた。ギャンブルに全額をスル田口容疑者とは、どんな人物像だったのかをマスコミ各社が周辺取材した。

週刊文春は友人の話として、パチンコ店に入り浸る生活をしていたことを次の様に明かした。

「店で会うと『ほぼ毎日来ている。昨日は10万円負けた』というほどのパチンコ中毒。以前は主流のミドルスペックを打っていたのに、ある時から大当たりが出やすい出玉も少ない甘デジを打つようになり、『給料では賄えないぐらい負けてるわ』と話していた」

田口容疑者がパチンコ好きであったことを受けて、テレビはパチンコ客から田口容疑者の様子として「財布の中に100万円ぐらい入っていた」というシーンを流していた。

このテレビ報道を観た業界団体トップは「強盗殺人を犯した犯人がパチンコなどで借金があったというような報道に、先入観で記事を書くのはもういいかげんにしてほしい。4630万円を使った今回の件とパチンコは関係ないだろう」と怒りを露にした。

この報道に対する行動も早かった。フジテレビに抗議した。

それに対する記事がこれだ。

スポーツ報知より。

俳優の谷原章介が19日、MCを務めるフジテレビ系「めざまし8(エイト)」(月~金曜・午前8時)に生出演した。  

番組では、山口県阿武町が誤って振り込んだ新型コロナ対策の臨時特別給付金4630万円の一部を使用したとして、電子計算機使用詐欺容疑で無職田口翔容疑者(24)が逮捕された事件を報じた。  

スタジオでアシスタントの永島優美アナウンサーがこの事件に関連し「ここで訂正があります。昨日の放送で『誤送金を受けた24歳の男性とみられる人物が100万円近い現金を持ってパチンコ店を訪れた』とお伝えしましたが、田口容疑者の民事事件の代理人弁護士によると田口容疑者は100万円をもってパチンコに行った覚えはないと話しているということです。お詫びして訂正いたします」と謝罪した。  
谷原も「これからも改めてより正確に丁寧に取材をしてみなさまにお届けしていきたいと思っております。申し訳ありませんでした」と謝罪していた。

以上引用終わり

客の伝聞をウラも取らないで垂れ流すメディア。犯罪の陰にパチンコというステレオタイプの報道には間違いであれば、今後も間違いを指摘していかなければならない。


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夢洲に6400台のスロ専が出来てもホールへの影響は限定的?

パチンコ日報ではこれまでにカジノ関連のエントリーを160本以上アップしているが、どちらかというと、我関せず。ホール関係者もユーザーも関心は薄かった。ところが、5月13日付の「大阪に6400台の超大型スロ専が誕生したらスロッターは行く?」はこれまでの反応とは打って変わったものがあった。

大阪・夢洲でIRの事業者となる予定のMGMが、カジノの概要を発表して、ここに6400台のスロットマシンを設置することが明らかになったためだ。

具体的に6400台の超大型スロ専が誕生することが、数字で示されると、ホール関係者も無関心ではいられなくなる。特に大阪で特にスロットが強いホールともなると、その影響は計り知れない。

日報のエントリーを読んだホール経営者は、メーカーの営業マンに「大阪のスロット市場にどんな影響が出るか」を聞いているようだが、一営業マンではその答えを持ち合わせているはずもなく、会社での宿題となっている。

前回のエントリーではユーザーの声をいくつか紹介したが、今回は、影響を受ける大阪のホールの声を紹介しよう。

「基本的に影響は少ないと考えます。大阪府内に約10万台のスロットが設置されています。その中でカジノと同等の射幸性の機械を好んで打つお客様は、現在では相当少ないと見ます。また、国内の人は入場料が取られる。わざわざカジノに行く人はわずかかと。従って、影響は限定的と考えています」(大手チェーン関係者)

「会社の中でカジノの議論は全く行われていません。パチンコは低レートのお客さんしか残っていないので、カジノにお客さんを取られる恐怖はありません。軍団がカジノで食えると思えば、カジノへ行くかもしれませんが、影響に関しては楽観的に考えています」(大手チェーン営業)

「一時的、間接的な影響はあるのだと思います。 遊技頻度や利用環境を考えると直接的な影響は薄いと捉えています」(大阪・中堅ホール関係者)

パチンコ客の懐事情が厳しくなっているのは、ホールが一番よく知っているから影響は限定的との考えだ。

その一方でこんな意見もある。

「自店の業績も落ち込んでいるので、影響を考える余裕はありません(笑)。ハコモノの時代は終わったものと思います。 90%はネットに移行すると確信しています」(大阪・中堅ホールオーナー)

コロナ禍でIR施設の閉鎖が続く中、アメリカではオンラインカジノの売上が上昇している。有力IRオペレーターは、オンラインベッティングやスポーツベッティング会社と提携を結び、この1年で新たなオンラインの勢力図が出来上がりつつある。前出のオーナーがいうようにハコモノの時代ではなくなってきている。


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有望な投資先はエネルギーの分野

新電力と契約していたホールが、先方が倒産したことで元の大手電力会社へ戻すことになるが、大手電力会社から断られている…。理由は「供給量を確保を担保できない」。一体何が起こっているの?

電力会社は昔からある東京電力や関西電力などの地域の電力会社の他に、電力自由化以降に参入した「新電力」がある。

発電所で発電された電気は、送配電事業者が電柱とか電線を使って運んで、最後に小売りするのが新電力会社である。

新電力会社が倒産というのは、電気の仕入れ値が高騰したことによるものだった。今までなら1キロワット10円で仕入れたものを30円で売っていたとすれば、その仕入れ値が40円まで跳ね上がり、40円で仕入れたものを30円で売るという逆ザヤ現象が起こってしまった。調達コストの上昇を小売価格に転嫁できなければ、売れば売るほど赤字になる、というわけだ。

その背景には液化天然ガスの需要が世界的に増えているところに、ロシアのウクライナ侵攻による原油価格の高騰だった。

コロナが始まった2020年の夏、電気代を知識と情報で下げる、という会社を取材したことがある。この会社のやり方は既存の大手電力会社から新電力に替えるという方法ではなく、独自の交渉力で大手であろうが新電力会社であろうが、単価交渉する、というものだった。電力会社が値上げを言って来たら、再交渉で値上げされないノウハウがあることがウリだった。

この会社と契約している250社中、100社がホールだった。電気代は平均で20%ほど削減されていた。

話しは代って、ホールが新規事業として投資すべき分野はどこか?

「原油の高騰でメジャーは儲かるようになっているように、狙い目は間違いなくエネルギー。世界的な投資家のバフェットは、石油株に巨額の投資を行っています。再生可能エネルギーも見直されています」(シンクタンク関係者)

海外からのエネルギーに頼っていては、今回のロシアの蛮行によって急変することも思い知らされた。


これだけエネルギー不足が不安視されているのに、日本で原発の再稼働は容易ではない。となれば、自前で確保できるエネルギーと言えば太陽光発電・風力発電・地熱発電・バイオマスなどがある。

DMMは最近太陽光発電のCMを流している。

ホール企業でも太陽光やバイオマス発電にチャレンジしているケースがある。これをさらに拡大する?


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失敗して成功する

世の中には絶対的な方程式があって、「成功の次は間違いなく失敗になる」という言葉に出会いました。その言葉を自分の人生に照らし合わせて後ろを振り向けば、その言葉通りでした。人間の生きる様というものは「上がっては下がる」の繰り返しなのですね。

研修中にただ釘の技術だけを教えていれば良いものを私は若い世代の人たちにこのようなお話をよくします。皆さんは何度失敗しても良いのだと伝えても、何故か上手くやろうと頑張ります。

しかし彼らはその過程において釘を一本叩いては上から横から斜めから、とじっと見ている。釘は叩くものであって見るものではないと何度言い聞かせても彼らは釘に見入ってしまい手が動かなくなるのです。

見かねた私は大声で「汚くてもいいから時間内に仕上げろ!いい大人が図画工作なんかやるな!」と言ったかと思えば出来上がったゲージを見て、

「今度はここが曲がっている、上下角度がバラバラだ、姿勢が悪いからこうなる」などと文句のオンパレードよろしく塾生たちにハッパをかけるのです。

ところが暫くして失敗作を幾度となく作るうちに塾生達はある瞬間に素晴らしいものを作り上げるのです。これが先週の記事にも書いた「取りに行く」ということなのです。

分かりやすく言えば自らの意思を持って行動するということです。上手く行った時の笑顔は格別です。何せ自分の努力によって良いものができたのですから嬉しくないはずがありません。

喜びは自分の手で掴む。それが実感できたときに人は成長するものです。

失敗という「結果の数」は痛ましい分、その人を豊かさの領域へと導きます。

失敗しない人は己の中の己にとどまってしまい、適当な言い分を取り繕って己の中だけで満足してしまうのです。そしてその姿勢は周囲の人達のために何も生み出さないのです。

パチンコ企業は一度成功した後、稼いだお金を手放したくなくなり、失敗を恐れ今日に至ります。だから何に対して努力していいのかわからないのだと思います。

経営者が己の心に籠城していても限度があります。それが今の状況なのでしょう。でも私は思うのです。今からでも遅くはない、と。正しい方向に向かい企業が努力をするならば、失敗しても努力をし続けるなら必ずその成果は現れるであろうと。

最後に失敗して成功するという方程式は釘も経営もその真理に違いはありません。


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