初のパチンコ族議員にメディアも注目した。終盤戦の業界の盛り上がりを目の当たりにした新聞記者の中には「こんなに熱い応援で盛り上がっている業界はない。当選する勢いがある」と予想する者もいた。
「無名の尾立さんが途中まで当落ラインだった。9万票は大健闘でしょう。次回は末端まで浸透するように周りを巻き込めば、1.5倍の13万票は固い。そのためには普段の会話の中で候補者の名前を浸透させる必要がある」(自民党関係者)
初の族議員選挙だったため、業界の集票能力がどれぐらいあるのか全く読めない中で選挙戦に入った。
投票前は当確ラインを12万票と仮定して、尾立氏の基礎票4万から差し引くと業界で8万票が必要だった。
業界の上層部は大盛り上がりを示していたが、現場の声を聴くと「おだちって誰? パチンコ族議員? そんなの初めて聞いたけど、選挙にはいかない」とかなりの温度差があった。族議員が誕生することで生活がどう変わるかが分かっていなかった。ここに一抹の不安があった。
遊技ビジネス最前線のコラムに大手ホールの従業員の選挙の関心度について書かれたものがある。
以下引用する。
「今回の選挙について私のホールにいる従業員に関心度を確認してみました。が、残念ながら店長以外のほぼ全員が政治や世間の話題に関心がないことがわかりました。正直驚いています。今回の参議院議員選挙でのこの業界の話題を含めて、特に副店長や主任、班長などに私から投げかけたところで全く反応がなかったので、こちらから説明しました。またアルバイトやパートには、普段の政治や生活の関心どころを聴きましたが、全く響いてくれませんでした」
メーカー関係者も現場が盛り上がっていなかったことを次のように指摘する。
「業界を挙げて動いてはいなかった。営業マンから聞いた話では盛り上がっているのはメーカーと販社。現場はもともと選挙に行く層ではない。全国の営業マンはホールへ足を運んでいるので、営業マンを選挙応援に使う。無関心な層に営業マンがお願いする。ホールに頭を下げるきっかけにもなる」
メーカー・販社は新台がないと商売にならない。その状況が長らく続いているので、それを打破するために業界は尾立氏に賭けたが、その緊迫感はホール現場には伝わっていなかった。
敗戦を受けて尾立氏の後援会長でもある全日遊連の阿部理事長は「業界内で危機感の共有ができなかった」と分析している。
メーカーとホールの温度差はこんなところにも表れている。
「パチンコ業界は機械によって復活する業界です。パチンコ・スロットに替わる第三の遊技機(パロットではない)を出せば、遊技人口も一気に増える。そこには許認可が絡むのでどうしても自民党の先生の力が必要になる」(パチンコメーカー関係者)
尾立氏の基礎票を4万票とすれば、今回はパチンコ業界から5万票を集めたことになる。パチンコ業界だけで13万票集めるとすれば後8万票必要になる。相当な数だがそれがホール現場からの集票力にかかっている。
尾立氏が当選していたら、3年後の参院選には業界内から候補者を擁立する空気もあったが、それも白紙になった。しかし、これで政界挑戦を諦めるのではなく、ホールから集票できる組織作りも必要になってくる。
れいわ新撰組やNHKから国民を守る党のように得票率2%で政党要件を満たしたように、ネットの影響力は何かと参考になる。ただパチンコ業界は一般ユーザーをどう巻き込むかが肝になる。

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