真の狙いは突然来なくなった常連客の動向を調査するためだった。枚数にして50枚ほど。一人でも返信があれば、との願いを込めて配った。
すると、ハガキの裏面に小さな文字でギッシリ書かれた女性客からの返信が届いた。
まず、常連客が来なくなった理由については、こう書かれていた。
「昔から話している人がいなくなって、つまらなくなった。その人が競合店へ行ったので、私も行った」
ま、常連客同士の良くある話だ。では、どうして、常連客は競合店に移ったのか?
「最初に移動した人は、ここが出なくなったから」
これも良くある話だ。
出なくなった、という理由に対してホールの責任者は首をかしげる。
割数を落としているわけでもなければ、明らかに回らなくなったわけではないからだ。競合店がそれ以上に出していたことが原因だった。そうなると割数は一緒でも自店が出なくなった、と感じるようになる。
競合店の動向を掴み切れていなかったことが敗因だった。出玉で客が移動するものだが、それ以上にホールを驚かせた意見がこれだ。
「競合店は新しいウォシュレットで気持ちがいい」
もちろん、ウォシュレットは付けていたが、トイレ設備は古くなったことは否めなかった。片や競合店はトイレもシンピカとなれば、お客さんも戻って来る理由がなくなってくる。
まだ、戻らなくなった理由は続く。
「食事休憩時間があまりにもうるさ過ぎる。30分ピッタリで呼び出され、40分で回収される。競合店はその辺が甘く、1回回収された友達は腹を立てていたし、従業員とも喧嘩になった」
「タバコの煙が辛い。競合店は空調がいいので、タバコの煙が横に流れてこない」
そんなこんなで常連客が次々に競合店へ乗り換えたので、今さら戻れない、ということが細かい字でビッシリと綴られていた。出玉でも負け、設備でも負けるとなると勝ち目はない。いくら従業員との人間関係が出来上がっていたとしても。
千疋屋総本店は創業120年の高級フルーツの老舗だが、創業当時は桃の安売りでスタートした。高級路線は2代目社長からで、バブル時代には企業から高級メロン100個の注文が来たこともあったが、バブルの崩壊で企業の注文は激減した。この時スイーツに路線変更して、今はスイーツの売り上げが8割を占めている。
時代に合わせて業態を変えて行ったが、千疋屋のフルーツは間違いないとの評判だけは定着している。メロンには保証書が付けられて美味しくなかったら交換してくれる。
これが信用にもつながっている。
一方のパチンコ業界の信用とは上記の様に移ろいやすい。割数を落としていなくても競合店がそれ以上に薄利多売を仕掛けてきたら、築き上げて信用も一瞬のうちに消え去って行く。
ましてや、常連客が団体で移動したとなると、ちょっとやそっとでは取り戻せない。
昔はリニューアルオープンでバカ出しして呼び戻すことをやっていたが、一度戻った客を離反させないためには、時間をかけて信用を築き上げるしかない。

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