とあるホールで窃盗事件が起こった。パチンコ台に置いていたケータイとカードが盗まれた。
被害者はすぐに店に届け出た。
これを受けて店は監視カメラの映像をチェックすると共に、警察に被害届を出した。映像には犯人と思われる男がケータイとカードを持ち去る場面がはっきりと残っていた。
捜査に乗り出した所轄の担当者は、証拠資料として提出してもらった画像を見て驚いた!
窃盗犯がケータイとカードを持ち去る右隣の台で打っている人物に見覚えがあった。何を隠そう、それは所轄の刑事だった。
やがてこの画像が所轄で問題となる。
後日、この刑事は上司から呼び出しを食らうことになる。
「きみがパチンコでうつつを抜かしている時に隣で置き引き事件があった。プライベートの時間でパチンコを打つのは別に服務違反にはならないが、ビデオには日付と時刻まで残っている。この日は明らかに勤務時間中だ! これは許されることではない!」
とんだとばっちりとはまさにこのことだ。
私服刑事が勤務時間中にパチンコしていることがバレてしまったのである。動かぬ証拠を突きつけられた50代の刑事はグウの音も出なかった。
上司の取り計らいで懲戒免職は免れたが、依願退職するしかなかった。この先10年以上は働かなければならないのに、身から出た錆とはいえ、とんだ災難だった。
今は警察署内でパチンコの話をするのはタブーになっているようだが、昔の警察官はパチンコ好きが結構いたもんだ。
それによって仕事道具の忘れ物も結構あった。
警察手帳や手錠ぐらいはかわいい忘れ物だった。トイレでピストルを見つけた時は、ホールの人間も腰を抜かさんばかりだった。
用を足す時に外したものをそのままトイレに忘れてしまったのだ。ホールも阿吽の呼吸で所轄に連絡したので、大ごとになることはなかった。
勤務中にパチンコをするのと、パチンコ店のトイレにピストルを忘れるのは、どちらがより重大事犯かといえば、もちろんピストルの忘れ物だ。
見つかれば依願退職ではなく間違いなく懲戒免職ものだ。
はてさて、この話にはまだ後日談がある。
普通、ホールで窃盗事件があった場合、ホールでは注意喚起を促すために、窃盗犯の映った画像をホール内に貼りだすことがよくある。
このホールも所轄に相談の上で、貼りだした。その時所轄から注意されたのは、周りのお客さんの顔が分からないように、モザイクをかけるなりの配慮だった。
ホール側は画像が結構、荒かったのでモザイク処理をかけなくても周りの人の顔は分からない、と思ってそのままを貼りだした。
何より、後日ホールに行って驚いたのが所轄の担当者だった。知らない人には分からないが、警察関係者ならすぐに分かるほどの特徴があるので、すぐに特定できるのであった。
しかし、所轄にはそれが身内の刑事だったとも言えず、そのままになっている。
仕事をさぼっているとろくなことは起こらない見本のような話だった。

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