従って、パチンコ客の消費金額を小売店を比較すること自体がナンセンスだ。パチンコには「ギャンブル」という要素があり、大きなリターンが期待できる。だからこそ、人は平気で数万円を遊技台に吸い込ませていくわけだ。
そんな豪快な消費行動を繰り返すパチンコ客の情報、特に「月に10万円以上使う太客」の情報は、名簿屋にとって垂涎の的である。彼らは一人当たり3000円もの高額を支払ってでも手に入れたいと言う。想像してみてほしい。もし名簿屋の手元に、月に10万円以上をパチンコに投じるリストが集まったら、そのデータはどれだけの価値を生み出すのか。
では、名簿屋はそのデータを一体何に使いたいのだろうか?
まず考えられるのは、「ターゲットマーケティング」だ。パチンコに月10万円も使える層というのは、相当な経済力を持っているか、あるいはギャンブル依存症の気配があるかもしれない。
どちらにしても、この層は「お金を使うことに躊躇が少ない人たち」と言える。これを見逃す手はない。たとえば、クレジットカード会社や高級車のディーラー、不動産業者などがこのリストを手にすれば、一気に「太客」に狙いを定めたキャンペーンを展開できるだろう。「お金を使う人」に向けた広告は、リターンが大きい。名簿屋は、こうした業界と連携し、データを売り込みたいに違いない。
次に考えられるのは、金融業者や消費者金融の存在だ。パチンコで大金を使う人々は、当然のことながら借金の可能性も高い。消費者金融にとっては、リストに載った人々は「新規顧客」としてのポテンシャルを秘めている。さらに悪質な業者であれば、この情報を元に違法な高利貸しへと誘導することも考えられるだろう。
他にも、保険会社や投資商品を扱う業者なども、名簿屋のターゲットに入るかもしれない。パチンコに多額を投じる層は、お金の使い方に関心がある可能性が高く、「余剰資金」を持っている場合も少なくない。彼らに「お金を賢く増やす方法」として、投資や保険商品を提案する営業が成り立つというわけだ。
一方で、名簿屋の暗躍はもちろんリスクを伴う。個人情報保護法の観点から、ホールの会員名簿を目的外で使用することは禁じられている。それでも、裏ルートを通じて流出する情報は後を絶たない。
ホール経営者も、違法な名簿の売買に手を染めた場合、最悪の場合は営業許可の取り消しを食らうことになる。それでもリスクを冒してまで情報を売りたいという業者がいるのは、名簿の裏にはそれだけの利益が潜んでいるからだ。
結論として、名簿屋が「月10万円以上使うパチンコ客」の情報を欲しがる理由は、彼らが金銭的に潤沢であることが前提のビジネスに直結するからだ。名簿屋にとって、ホールの会員情報はまさに「金脈」と言える。それを手に入れるためなら、法の網をかいくぐってでも、必死になって手を伸ばす価値があるというわけだ。

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