「遊技機メーカー時代は『一発当てろ!』『ヒット機を作れ!』と上から檄を飛ばされ、常に緊張の中で働いていました。今の現場では、地道なものづくりを大切にし、お客様の立場に立ったデザインと機能性を追求しています。この違いは非常に大きい」と彼は語る。
遊技機業界は、ヒット作の誕生が収益を決める。新台のリリースごとに「当たり」を狙う開発が求められるが、一度当たったからと言っても、それが安定したパフォーマンスを発揮することはないのが現状だ。
国内の水筒市場は、年間約2000万本が販売され、持続的かつ安定したニーズがある。例えば、2023年5月時点のNintの推計データによれば、Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングの3モールにおける水筒の市場規模は、いずれ同時期と比較して103%を記録しております、堅調な成長が続いている。
また、環境意識の課題を背景に、マイボトル市場も拡大している。 2021年のアンケート調査では、持ち歩き可能なマイボトルを使用している人の割合が75%に達成し、習慣として定着しつつある。
それに加えて、子供が保育園や幼稚園に通い始めるときに水筒を購入する家庭が多く、小学校に入学しても低学年と高学年では、成長段階に応じたサイズやデザインの変更により買い替え需要も生まれている。
これに対して遊技機メーカーの開発姿勢は、短期的なヒットに依存しており、地道な積み上げよりも派手や話題性が優先される傾向が強い。
実際、遊技機業界で安定して売れ続けている製品は限られている。その代表例が三洋物産の「海物語」と北電子の「ジャグラー」だ。これらが長く愛されている背景には、オリジナル版権であることにも注目した。
一旦、版権に依存した機械開発は、一時的な集客効果があっても、長期的には版権を提供する企業を潤すだけ過ぎない。
「遊技機メーカーには、もっと腰を据えて安定した機械作りを考える発想が必要だ」と彼は指摘する。
いつまでもあると思うな親とカネ、という諺がある。その言に倣えば、メーカーもいつまでもホールが機械を買ってくれるか分からない。儲からなければ新台の入れ替え頻度も台数も減って行く。ホールとしては長期に亘って運用できる機械を望んでいる。
ホール側の運用にも問題はある。
昔は稼働が悪くなれば、割を上げて稼働を掘り起こしたものだ。それは40玉交換だからできたことだが、等価では簡単に割を上げることもできない。今は稼働が落ちれば、すぐに諦めてしまう。稼働が悪いのはホールが玉を出さないことが根本原因でもある。
話しを戻そう。
彼が水筒メーカーで学んだのは「ものづくり」における安定感の重要性だ。目先の流行や派手な話題に頼るのではなく、顧客に長く愛される製品を追求する姿勢こそが、真の成功を生む原動力になるという。遊技機業界がこの視点を取り入れることができれば、さらなる発展の可能性が広がろう。
遊技機メーカーから水筒メーカーへ転職した技術の言葉は、「ものづくり」の本質を考えさせる機会を提供している。業界全体で共有することが求められる。

※コメントには必ずハンドルネームを入れてください。匿名は承認しません。コメントがエントリーになる場合もあります。