ところが、実際に勤務して分かったことは、ゲーセン経営の面白さだった。中でもクレーンゲームの設定は、スロットの設定や釘調整と相通じるものがあるのだが、面白さはホールの比ではなかった。
クレーンゲームファンは、YouTubeなどで取り方を研究してくる猛者が多いので、店長は彼らとの勝負が楽しいことに目覚めたのであった。
アームの強さの設定や景品の置き方で難易度が変ってくる。その駆け引きが楽しくて、毎日ワクワクしながら開店を迎える。
ここでパチンコファンとクレーンゲームファンの違いを発見する。
言い方は悪いが、パチンコファンはボッたくっても打ってくれるが、クレーンゲームファンは全く取れないほど難易度を上げるとソッポを向いてしまい、二度と来てくれない。要は何も考えないで打ってくれるパチンコ客と攻略法を常に考えながら挑んでくるクレーンゲームファンでは、緊張感がまるで違った。
頭のいい客を相手にすることは、この緊張感を逆に楽しめるようになった、ということだ。
ゲーセンを新規オープンした時は、昔の夕方オープンのパチンコ店の新装開店の時のように、クレーンゲームのアームの強さをMAXに設定して、景品が取れやすいようにした。景品の補充が大変だったが、昔の新装開店で玉をジャンジャン出した時のことをゲーセンにも応用したら、これが大当たりとなった。
「とにかくお客さんとの駆け引きが楽しい。お客さんが考えていることの裏の裏を読みながら毎日営業している。給料は下がったけれども、ゲーセンの店長の方が遣り甲斐があって楽しい。ホールの店長? 給料が上がっても戻りたくはありませんね」と店長。
チェーン店が次々に閉店して行ったということは、出玉競争で競合店に負けてしまったことを意味するわけだが、玉も出せない状況での戦いには戻りたくない、というのが本音だろう。
パチンコ経営、ボートレースのチケットショップ経営、カジノ(ベトナム)経営の3つに関わった関係者によると、一番楽しいのはホーとレースチケットショップだという。理由は、最初から控除率が25%と決まっているので、むしろ、お客さんに「勝て!」と応援したくなる、という。
対してカジノは大口客がたまに大勝ちすることがあるので、胃が痛むという。
さしずめ、ゲーセンがボートレースチケットショップなら、パチンコはカジノということになる。

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