これはグラマラス(魅惑的な)とキャンピングを掛け合わせた造語で、テント設営や食事の準備などの煩わしさから解放する。
しかもテントとは思えない広い室内は、ホテル並みの豪華な設えで、手ぶらでキャンプ気分が味わえる。しかもリゾート感覚で。
ホールオーナーは新規事業を模索する中で、最近ブームになっているこのグランピングに白羽の矢を立てた。所有する土地の有効活用の目的もあった。
オーナーは部下に指示してグランピングなどを設計している事務所に問い合わせの電話を入れた。
「グランピングを始めたいと思っているんですが、それでアドバイスをいただきたくてお電話しました」とホールでは部長職の人がアポを取った。
話しを聞いてみると、オーナーも社員も誰一人グランピングを経験していない、ということが分かり、興味本位ぐらいにしか思わなかった。
やはり自分で体験してみて、その素晴らしさを皆に知って欲しい、というぐらいの熱意がないと設計事務所の方も本腰にならない。
「まず、皆さんが体験してからじゃないですか? 話を進めるのはそこからだと思います」と諭すように伝えた。
「では、体験できるグランピングを紹介してください」
後日、紹介されたグランピング会場に現れたのはオーナー1人だった。ここでも拍子抜けした。新規事業と本気で考えているのなら、社員も数名連れてくるものだ。そもそもソロキャンと違ってグランピングを1人でやるものではない。リゾート地で、皆でワイワイ楽しむのがグランピングだ。
初めてのグランピング体験にオーナーは何をどうしていいのかも分からず、バーベキューも施設のスタッフが全部手伝った。
体験を終えて再びホールの部長から電話が入った。
「オーナーは非常に満足しています。この事業をやりたいと考えています」
設計事務所側はオーナーの本気度を聞きたいということで、事務所に来てもらった。今流行っているからやりたい、というぐらいの気持ちでは失敗するからだ。
代官山の事務所でのオーナーとの打ち合わせが始まった。
「ご予算はいくらぐらいをお考えですか?」と単刀直入に切り出した。
「それが分からないから教えてください」とオーナー。
鶏が先か卵が先か――ではないが、事務所側にすれば予算を聞かなければ話が進まない。これだけの予算でどこまでできますか?くらいの方が話も進めやすい。
最初の段階でボタンの掛け違いが始まる。
「新規事業で始めるのだから、本当にキャンプやグランピングが好きな人が社内にはいなければいけないのに、このパチンコ屋さんに誰一人いなかった。こんな熱意のない人とやっても後々トラブルになるだけ」と本音は言わなかったが、「他を当たって下さい」とやんわりと断った。
似たような話があった。過去記事の新規事業のうどん屋がそれ。思い付きを全否定する気はないがやはり最低限、それが好きでなければ熱も入らない。

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