マグニチュード7.6の「令和6年能登半島地震」が発生していた。
この日、都内のホールに勤務するホール関係者は、大晦日の営業を終えると、元日からは会社に有給休暇を取っていた。正月に休むのは事情があった。実家の石川県輪島市に住む父親の様子を見舞うためだった。
元日、北陸新幹線で実家に向かった。その道中で地震に襲われた。新幹線は止まり、列車内で足止めを食う。
実家に辿り着いたのは2日の朝だった。地元は大規模火災が起こった場所で、一面焼け野原に言葉を失った。
幸い、実家は火災は免れた地域にあり、2年前に建て替えていたので倒壊することもなかったが、部屋の中は散乱していた。
落ち着きを取り戻したところで、会社に状況を連絡した。天井が崩落したホールの情報なども報告した。
この連絡を受けて、社長はすぐに決断を下した。
「1月半ばまで出社しなくていいから実家を手伝え」
有休とは別に特別休暇を出した。
社長は他に地震があった北陸地域に親戚がいる社員はいないかと調べたところ、1人だけ該当者いた。「部屋はぐちゃぐちゃになっている」ということですぐに帰省する指示を出した。
併せて、社員の出身地域と両親がどこに住んでいるかのリストを作るように指示した。天災が起こった時にすぐに対処するためだった。
社長が迅速な行動に出たのは、日報読者で過去記事に災害が起こった時に対処したホールの参考記事を覚えていたからだ。
それがこれだ。
「あるホール企業が、2011年の東日本大震災を契機に災害特別休暇制度を新設した。東日本大震災では社員の実家が全壊するとともに、親族も失った。災害による見舞金の社内規定はまだなかったが、社長はポケットマネーで50万円の見舞金を出した。避難所に支援物資を送ったり、ボランティア活動に人も出した。
災害特別休暇制度では、本人の実家か配偶者の実家が災害に遭った時は、5日間の被災休暇を与えると共に、見舞金を支給することになった。
2019年8月、九州北部を襲った大雨ではホールが水没する被害が出た。この時、社員の中に佐賀県の実家が浸水被害に遭い、適用1号となった。
社内規定では家屋が浸水した場合は5万円、家屋が半壊した場合は10万円、全壊の場合は20万円の見舞金を支給する。往復の交通費も全額が支給される」
以上
社員の家族にまで寄り添う制度がもっと業界に広まればいいことだ。
追記 1.15
輪島の実家に帰っているホール社員の方は、このまま輪島に留まり、会社を辞める決意をした。その旨を社長に伝えた。
社長は「それでいい。地元で頑張れ」と背中を押した。
ホール社員の地元の同級生が会社を興しており、そこへ転職することになった。災害の復興には欠くことのできない業種のようだ。これから仕事はどんどん増えるのに、人手不足に陥っている。

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