パチンコ日報

ニュースにならないニュースの宝庫 

第8話 悲しい話 ⑤

堕ちる

高校三年に上がるその年の1月、秀樹は学校を退学になる。学校に通う事の意味を感じなくなっていたところでのこの処分はさして気にもならなかった。しかし父親が秀樹と口をきいてくれないことには閉口した。小さい頃はあれほど父親を慕っていた秀樹が今はかける言葉が見つからない。
 
ある日彼は決意をする。部屋においてあったJRの駅の売店で売っているKIOSUKUのロゴが書かれている茶色の紙袋にBVDのブリーフと白い綿の靴下を何枚か放り込み、それから歯ブラシと歯磨き粉がセットになったエチケットライオンと電気髭剃りも忘れずに荷造りを終えた。
 
父親が帰ってくれば決心も揺らぐ。後ろ髪をひかれる思いで秀樹は住み慣れたこの部屋を後にした。どこに行くとも決めず、ただ心の傷をひたすらに隠しながら沈痛な面持ちで夜道をさまよう。舗装されていない車の轍によって凸凹になった道をなれた足取りでとぼとぼと歩く秀樹はいったい何を考えていたのだろうか。父親に対する懺悔の年か、あるいは記憶にあるはずのない優しい母親の笑顔か。
 
いや、今彼は鍵っ子事件が起きる前に遊んでいた小学校の友達の顔、そして顔を思い出していた。忘れるはずもない憎むべき存在。

「俺は今こんなにみじめなのに、なんでみんな楽しそうな顔してやがるんだ」といつもの秀樹なら激情に駆られて荒れまくるはずなのだが、今日だけはそんな気持ちになれない。自分が哀れで情けなくて仕方がない。
 
そんなやるせなさを払拭しようと、彼は人通りの多い駅前に足を向けた。通りすがる人々の顔が皆幸せそうに見えるのはきっと気のせいに違いない。自分にそう言い聞かせた。そして今の惨めさを必死になって否定しようとした。
 
どこに行くとも決めていない秀樹は急に空腹を覚える。ポケットをまさぐると幾枚かの紙幣と小銭があった。手持ちの金は八千五百円。他校の生徒から脅し取った金だ。そのはした金を握りしめた秀樹はこんな時でも腹が減る自分をひどくいじましいと思った。どの道いぢましいこの俺は今更優等生ぶっても何にもならない。何も気にしなければいいじゃないか、と自分を叱咤した。
 
意を決した秀樹は、ふてくされ気味の態度でマクドナルドに入りチーズバーガーとコーラをぶっきらぼうに注文する。店員のやけに明るく丁寧な積極態度が鼻に突く。

「お前ら家でもそんな態度で、そんな笑顔で暮らしてんのかよ。どうせ言われてやらされてるんだろうがよ」

喉まで出かかった言葉をかろうじて呑み込む。言えば自分がもっと惨めになるからだ。
 
空腹を幾分か満たした秀樹は少し落ち着くと、今度は逆に不安に襲われる。考えてみれば自分なんかに出来る仕事なんてあるはずもなく、つてもない。今夜はどこに泊まろうか。こうして考えてみるとこの世の中にぽつりと取り残された自分は、何てちっぽけな存在なのだろうと改めて思い知らされた。

学校とか家とか限りのある空間の中では何でもできたし何でも言えた。自分の好き放題で生きて来ても誰も何も言わなかった。だからそれでいいものだと勝手に判断していたのである。
 
ところが一度自分の知らない世界に足を踏み入れようとした途端に足が竦んだ。見慣れた駅前の風景ですらどこかよそよそしく感じる。一瞬帰ろうかとも思ったが、秀樹にその決断は下せなかった。人生乗るか反るか、上か下かの分岐点。彼は見ず知らずの世界へと足を踏み入れることを決意した。
 
この後秀樹はいろいろなことを経験する。キャバレーの呼び込みもやった。ソープランドの店員もやった。しかしどれも長くは続かなかった。性風俗の仕事が悪いとは思わない。だが何故かそこで働く従業員たちとそりが合わないのだ。意思の疎通が取れないと言うよりも、そこで働いている従業員も、そして自分も好きになれなかった。
 
職業に貴賎はないというが現実にはある。プロとしての意識をもってすればどんな職についてもそれは立派な仕事になり得る。しかしその日暮らしよろしくただ漫然と時間を費やすだけの仕事はその職種を問わず人間に貧しさを与えるのみである。場末のキャバレーやソープランド、ストリップ小屋は秀樹を貶めるのに格好な場所であった。
 
当初は破壊願望も手伝い性風俗で働く事がある種の快感を生んでいた。人目を気にせず自分の生きたいように生きる。決められた時間に決められた仕事さえしていれば食事は支給されるし、寝るところだって供給される。その日を気ままに過ごしていれば誰かに文句を言われることも無い。
 
しかしある日秀樹はこの道何十年というベテランの暮らしと自分の暮らしを比較してみた。何も変わらないのである。勤務時間も仕事の内容も新参者の自分とこのベテラン社員との差は何一つなかった。

「楽だからと言ってここにずっといたら俺もいつかはあんな風になるのか」

賢明な判断ではなかろうか。人間はどんな人間でも親をもつ。子はその親の思考回路を受け継ぐ。それが精神のDNAとも言える。自分をこの世に産んでくれた、顔を想い浮かべることすらできない母親の人生が秀樹に託されている。一生懸命に育ててくれた父親の幸せになってほしいという切なる願いが込められている。殺人を犯した犯人ですら時に親の前では無力な存在になり得るのである。
 
若い秀樹は場末の仕事を通して少しだけ物事の道理を考えるようになった。やはり何も言い残さずに出て行った後ろめたさは日を追うごとに増し、父親に対する思いも募った。秀樹の良いところは一度堕ちた自分を自力で引っ張り上げようとするそのバイタリティーにあった。
 
今は会えないけれど、この先必ず社会人として認められるようになったら父に会いに行くのだと秀樹は心に決めた。そしてその意志は決して揺らぐことなくまっすぐに伸びた。その日暮らしを決め込みその場所から動こうとしない同僚たちを尻目に秀樹はストリップ小屋を後にした。

つづく


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クリスマスコスプレ事件簿

ハロウィンやクリスマスシーズンになると、スタッフがコスプレで接客するホールは少なくない。

では、なぜコスプレをするのか、実際に行っているホールはこんな理由を挙げる。

「通常の会話は『出る』、『出ない』の声が多くなっており、お客様を飽きさせないことが非常に難しくなっている中、少しでもお客様の視点を変える必要があります。ハロウィンやクリスマスの仮装は、スタッフも制服を変えることで、良い刺激になり、常連のお客様との会話にもつながります」(Aホール)

「10,11月は業界的に稼働が落ち込む月となるので、盛り上げる意味も込めています。自店のウリの女性スタッフの紹介の意味も兼ねてお客様との会話のきっかけづくりにしています」(Bホール)

「当店ではバレンタインデー、七夕、ハロウィン、クリスマスの年間行事としてコスプレを実施しています。お客様の楽しみの一つにもなっています。スタッフも衣装が変ることで、身だしなみを可愛くしたり、と意識が上がって、相乗効果を発揮しています。コスプレは店内の雰囲気も変わり、常連のお客様との会話のきっかけづくりにもなり、コミュニケーションの回数が上がります。何よりもコスプレしているスタッフに会いに来てくれるお客様もいらっしゃいます」(Cホール)

いずれのホールにも共通しているのはお客さんとの会話のきっかけ作りで、これにより、一層コミュニケーションを図っていく狙いがある。

実際、コスプレしてみて、スタッフの感想も聞いてみよう。

「ちょっと恥ずかしかったけど、こんな衣装を着ることがないので、楽しめました」

「普段の制服と違って新鮮さが出てよかったです」

「カワイイ服でテンションが上がり、業務も楽しくできました」

「たくさんのお客様にカワイイねって言われました」

「普段話をしたことがないお客様から声を掛けられ、話すようになりました」

やはり、コスプレのキーワードは「カワイイ」だ。衣装がカワイイから女性スタッフもテンションが上がるというもの。

ところが、あるホールでクリスマスのコスプレを巡ってひと悶着あった。

そのホールは女性スタッフは赤いミニサンタの衣装に、赤いクリスマス帽子といういで立ちでクリスマスコスプレを実施しようとしたところ、一人の契約社員が断固拒否をしてきた。

アルバイトを経て契約社員になり、初のクリスマスコスプレだった。

店長は「じゃ、帽子だけでも被ってくれないか」とお願いしたが、これも拒否してきた。女性スタッフの意志は頑なだった。中年になってサンタコスプレをやってくれと言えば、恥ずかしいから「嫌」ということになるが、若いスタッフからはミニサンタの衣装は好評で、拒否する理由が分からなかった。

結局、契約社員はクリスマスコスプレをすることはなかったが、後日、店長宛に一本の電話が入った。

それは彼女が所属する新興宗教の弁護士からだった。

その新興宗教はキリスト教を邪道として捉えている立場から、店長の命令は「パワハラに当たる」という内容だった。

お寺の坊さんでも家では子供のために、クリスマスを祝うケースもあるように日本人は宗教に対して守備範囲が広いというか寛大だ。

で、結局、ホール側から10万円の和解金を提示して示談は成立した。店長にしてみれば、彼女がキリスト教を敵視する新興宗教に入っているなど知る由もない。



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ホール関係者と結婚して分かったこと

女性ライターがホール関係者と結婚した。ライター仲間の忘年会に出席した彼女は旦那の給料が1100万円なので、ライター稼業に区切りをつけることをその場で打ち明けた。

仕事柄多数のホール企業や店長を知っている中で、ホールの内情も分かってきたが、給料が結婚の引き金になったかどうかは知る由もない。店長の給料もピンキリで600万円~800万円以上といったところか。業界が儲かっていた時は店長になれば1000万円を謳うホールもあったが、今はそんなに出すホール企業は稀。

で、結婚相手として選んだのが理由の一つが、礼儀正しさがダントツだったこと。

業界あるあるの中でカワイイアルバイトが入ってくると店長が手を出す、というのがあったが、それも今や昔。特に大手になればなるほどコンプライアンスが厳しくなり、「ご飯食べに行かない」と誘うことはご法度。弱い立場にあるアルバイトが断れない=パワハラ認定されてしまう。

従って個人的に誘えない店長クラスは、結婚相手がいないケースが少なくないようだ。自分からは声を掛けられないので女性社員からのアプローチ待ちだという。

ホール企業が大卒新卒を採るようになって30年近くになる。当初は本当にパチンコ好きが入社してきたが、今はパチンコをやったことがない学生が入社するようになった。つまりそんなにパチンコが好きでもないのに、ホール企業を選択するということは何をか言わんや。

で、優秀な人材を採用するには給料を上げることも一つの手だということになった。初任給23万円よりもインパクトがあり切のいい数字と言えば30万円だ。新卒を上げれば、全体を上げることにもなりかねない。しかし、人件費を抑えたい会社側からすると、スマート系で現場スタッフの数を減らすしかない。

倒産の心配もないぐらいの財務基盤はしっかりしているが、本社のシステム管理部でコンピュータに携わって50代の役職者が転職を考えた。転職サイトは年齢的ハンディーがあるが技術的なスキルも加味して、22社を紹介した。web面接だったが全滅だった。コンピュータには自信があっただけにショックだった。

「自分が人事担当で能力が一緒なら30代と50代ではどちらを採用しますか」と諭された。さらに「採用されても年収で200万円下がる。転職しないで定年までいた方がいい」とのアドバイスを受けた。
しかし、本当に辞めたい理由は肩たたきにあっていることを打ち明けたのであった。会社としても役職者の若返りを図りたい狙いがあるようだ。

新卒で入社した人たちは50代に差し掛かっている。社員の高齢化も始まり、会社も社員も転機を迎えようとしている。



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タクシードライバーとパチンコ

都内のタクシー料金が15年ぶりに改正され、11月14日から初乗り運賃が420円から500円になった。走行距離ごとの加算額も233メートルごとに80円から、255メートルごとに100円の加算に改正された。値上げ率は14%となった。

タクシー料金が値上げされたからと言って利用客が減るということもなく、むしろインバウンドが追い風にもなっている。運賃が上がれば、必然的に歩合が付くドライバーの給料も上がった。月額で2~3万円の手取りアップとなっている。

「それまでは、今日はこれぐらいでいいか、と妥協していたのに、もうちょっと頑張ってみようと自らがノルマを課すドライバーが増えてきましたね」と話すのは都内大手タクシー会社の関係者。値上げですぐに給料がアップした業種の一つともいえるのがタクシーでもある。

で、タクシー会社の食堂でドライバー同士の会話の中から聞こえてくるようになったのが、競馬やパチンコの話だ。元々ドライバーはギャンブル好きが少なくない傾向があったが、懐具合が温かくなったので財布の紐も緩むというもの。「どこのパチンコ屋が出している」などと情報収集している。

ここから面白い提案をしてくれる。

「うちの会社では認められませんが」と前置きして、タクシー会社の営業所に近いホールへ贈るアイデアだ。

「ドライバーはカレンダーをもらう機会が少ないので、年末に『これ、皆さんでお使い下さい』とホールのカレンダーを配りに来てはどうですか? 事務所に近くの飲食店のメニュー表を置いていたら、出前を注文するのと同じで、カレンダーは1年間家に貼るので、ホールの店名が刷り込まれ、パチンコをやりたくなったら行くのではないでしょうか」

聞き流して終わりかも知れないが、新規客の開拓とは魚群がいるところに釣り糸を垂らすことである。パチンコ好きがパチンコをやろうというタイミングが大事である。

ドライバーでも特に水揚げが多い人は、独自のノウハウを構築しているものだ。つまり、いつ、どこへ行けば長距離客が拾えるか、というノウハウだ。それを皆が思いつくような場所では競争相手が多いだけで効率は悪い。

一つだけ教えてくれたヒントがこれ。

例えば、マルハンなら7日と8日の閉店30分前の景品交換所近く待つと長距離客が拾えるようだ。そんな独自の知識を積み重ねていくことで他のドライバーよりも同じ労働時間で効率よく売り上げを上げることができる。



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内需拡大でパチンコ業界には追い風

先日、このまま円安が進み、1ドル400円時代になったら、消費税は20%台まで進み、国民はおカネを使わなくなり、パチンコを含めレジャー産業は大打撃を喰らう、という旨のエントリーをアップしたが、シンクタンクの見方は真逆だ。足元から景気が回復している業種が増えてきている、といのがその理由だ。

では、どの業種が回復しているのか見てみよう。

中部経済新聞社がまとめた名古屋市内主要13ホテルの11月の平均客室稼働率は81.0%と前年同月比21.2ポイント上昇した。80%台は2019年11月以来、3年ぶり。「全国旅行支援」効果で、コロナ前の水準に戻った。ほぼ満室の目安とされる80%を超えたのは13ホテル中10ホテルで、大半を占めた。

ホテルの稼働御率が上がったのは、政府が外国人の水際対策を大幅に緩和したことが大きい。これで観光目的の海外個人客数が伸びたことに加え、11月に開業したジブリパークの波及効果や旅行割効果が、団体・ビジネス客を取り込んで稼働を引き上げた。ジブリパークのオープン2カ月前の9月からすでに来年2月までの予約で埋まったホテルもあるほどだ。

インバウンドの波及効果は百貨店の免税売上高に寄与している。10月に約136億8000万円となり、前年同月の4.3倍だった。売り訳は大丸松坂屋百貨店が前年同月比で5.9倍、三越伊勢丹が4.9倍、高島屋が3.6倍となった。円安効果が重なって、ラグジュアリーブランドや時計など高額品を買い求める個人旅行客が急増した。

12月に入るとコロナ前を上回る免税売上高を稼ぐ店舗も出てきた。松屋銀座店は11月以降、50万円前後の高級ブランドのバッグや高級時計が頻繁に売れており、12月1-15日の免税売上高はコロナ前19年の同期を5.7%上回っている、2023年も大幅に拡大するとみられている。

さらに集客が期待されているのが、としまえん跡地に来年夏に開業するハリーポッターのテーマパーク「スタジオツアー東京」だ。ロンドンに次いで世界で2番目の施設となり、アジア圏からの集客も見込まれており、内需拡大の一翼を担うことが期待されている。

新型コロナウイルスで大打撃を受けた旅行業界からの景気回復が著しい。インバウンド客が増えれば、それに関連する百貨店のような業種から恩恵を受けることになる。

インバウンドだけではない。韓国は文政権時代に日本製品の不買運動を起こしていたが、親日派の政権に替わり、元々人気があった日本製ビールの完全復活だ。韓国関税庁の輸出入貿易統計によると2022年第1四半期から第3四半期の日本ビール輸入量は1万3198トンで、2020年の年間輸入量6489トンの倍以上、昨年1年間の輸入量7751トンを70.2%上回っていた。ユニクロのヒートテック人気も再燃している。

優秀な日本製品を輸出する企業にとっては円安は追い風になっている。給料が上がらないと内需拡大にはつながりにくいが、給料を上げられる大手から実施して、使える人から使っていけば、内需は拡大し、パチンコ業界におカネを落とす人も増える、というのがシンクタンク関係者の見立てだ。

ただ、低所得者や年金生活者には実感できない話ではある。


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