就職して1年後のことだった。パチンコ業界の勉強会へ参加したいということで、A君を招待した。勉強会が終わった後の飲み会にも参加したA君だったが、「ちょっと名刺を切らしていまして」と言い訳をしながら、会社の名刺を渡すことはなかった。
その理由は会社から開発に関わる者は、名刺を渡すことを禁止されているからだ。これはこの会社だけなのか? それとも業界の遊技機メーカー全体に共通することなのか?
「開発の人間は基本、協力会社の人としか付き合いはない。開発に関わる人材だと分かると人材が流出した過去があるので、会社からも外部との交流は禁止されています」(メーカー開発)
確かに、メーカーの社内でも開発室に入れるのは開発と極一部の関係者以外は入れないように、入室管理が徹底されている。それだけに、開発室はメーカーのトップシークレットの塊とも言える。
メーカーの一般社員は、現在自社がどんな機械を開発しているかは、知る由もない。規模が大きくなれば、一般社員との交流もないのか、誰が開発の人間なのかも知らないようだ。
ここからは昔昔の話である。
「現金機時代、連チャン機で大ヒットしたメーカーの開発の人材が狙われましてね。下位メーカーにすれば、自社で研究開発するにも優秀な人材がいない。それなら、プログラムを作った人を直接ヘッドハンティングする方が早い。給料を2倍出されて、引き抜かれていきました。そうやって下位メーカーはヒット機を連発すことで上位メーカーになっていた」(開発関係者)
ヘッドハンティング以外ではハニートラップも結構あったようだ。
ターゲットになるのはプロジェクトリーダーで、版権情報や開発情報を盗んでいった。そういうことをメーカー同士がやりあっていたこともあってか、表に出ることもなかった。
そうした過去が遊技機メーカーにあったので、開発の担当は、外部と交流しても名刺を渡すことは禁じられている。万一、外部の人に開発担当と分かった場合は、降格や開発から外す会社もあるようだ。
外部との交流が遮断される中で、開発に取り組む人たちが、業界誌では報じられない、ニュースにならないニュースの情報源として活用しているのがパチンコ日報だという。
しかも、日報で取り上げた意見をヒントに商品化されたものもある、と言う。嘘のような本当の話らしいが、もちろん、それが何であるかを明かすことはなかった。
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