そんな正月営業期間中、ある社員が「親の容態が悪く、様子を見に行きたいので一日だけ休ませてほしい」と休暇願を出した。
家族の危篤ともなれば、会社としても無下にはできない。上司も事情を汲み、やむなく休暇を認めた。
ところが、その判断が後に大きな波紋を呼ぶことになる。
2日、北関東一帯は積雪に見舞われ、各地でスリップ事故が多発した。その社員も事故を起こし、重傷を負ったのだ。問題は、事故後の状況説明から明らかになった。彼は親の見舞いに行っていたのではなく、友人と遊びに出掛けていたのである。つまり、休暇理由そのものが虚偽だったのだ。
重傷を負った社員には同情すべき点もある。しかし、これに激怒したのがオーナーだった。オーナーは、社員が嘘をつくことを極端なまでに嫌う人物だった。それには、30年ほど前の苦い経験がある。
遅刻や欠勤の理由に小さな嘘を重ねる社員がいた。当初は些細な虚偽に過ぎなかったが、やがて会社の売上金を持ち逃げされるという重大な不正事件に発展したのだ。この一件以来、「嘘をつく人間は不正の温床になる」という考えが、オーナーの中で強く根付いた。
当時であれば、嘘をついた社員は即解雇という判断も珍しくなかった。しかし、現在は労働基準法や判例の積み重ねにより、簡単にクビを切ることはできない。オーナーは弁護士と相談し、法的に可能な範囲で最も厳しい処分を検討しているという。
では、このケースで妥当な処分とは何か。まず、虚偽申告による休暇取得は、服務規律違反に該当する可能性が高い。ただし、業務上の横領や直接的な損害を与えたわけではないため、懲戒解雇はハードルが高い。
一方で、戒告や訓戒だけでは、正月営業という重要局面で人員を欠いた事実や、組織の信頼を損ねた重さに見合わない。
労務士によると、現実的な落としどころとしては、「出勤停止処分(数日~数週間)」や「減給処分」が妥当だという。
加えて、始末書の提出と、今後同様の虚偽があった場合は懲戒解雇もあり得る、という厳重注意を付す。これは、感情的な制裁ではなく、組織としての信頼回復と再発防止を目的とした処分だ。
正月営業を支えるのは、制度よりも信頼である。その信頼を裏切った代償は決して軽くない。今回の処分は、本人にとっても、他の社員にとっても、「嘘の重さ」を改めて突き付けるものになるだろう。
※コメントには必ずハンドルネームを入れてください。匿名は承認しません。コメントがエントリーになる場合もあります。