「1回のボーナスが500万円。電話で注文を断るのが営業マンの仕事でした。会社の方針は営業力が0でも売れる機械を作ることでした。それを見事に体現していましたね」
この元社員は4号機バブルが終わったころの入社なので、その恩恵には浴していないが、景気がいい時は一般の営業マンでも1000万円前後の年収をもらっていた。
「会社からオーナーから金品をもらうことは厳禁されていましたから、本命の機械が出るシーズンになるとオーナーと食事も行けませんでした。オーナーも『機械の話は絶対にしないから、食事だけだから』と誘われたりしますが、最後はやっぱり機械の話です。私ではありませんが、ポケットに札束をねじ込まれた先輩社員もいました」
売れる機械を作れるメーカーは強い。
「現金をもらってはいけないので、オーナーからゴールドやブラックカードを持たされていた先輩社員はいましたね。何軒も家を持っている人もいました」
つくづく売れるメーカーに羨ましさを感じるが、メーカーはどこもそういう方向性を目指しているのだろう。
同社にはローカルルールがあった。
本社の近くで飲むときは社章を外すこと。電通、博報堂の接待は受けないこと。
4号機バブルが終焉する時代に入社した元社員は、5号機の初号機から売らなければならなかった。
「ダメな機械を売ってるからこそ、ホールには毎日顔を出しました。ダメな機械でも全国にはうまく使っているホールはあります。そういうホールの資料を携え、機械代を上手に回収する使い方を提案しました」
その元社員が担当していたホールは、年末の忘年会でメーカーの貢献度を表彰する制度があった。ある一定台数以上を買ったメーカーが対象で、ホールが買った機械がどれだけ利益貢献したかを数値化して表彰する。
当該メーカーは例年、上位には入っていなかった。
ところが元社員が担当するようになって、表彰されるようになった。
どうやったのか?
「営業マンにすれば、たくさん売った方が営業成績が上がりますから、多く売りたがるのですが、私は自分の成績のことよりも、ホールさんの立場に立って適正台数を勧めていた結果です」
これは非常に重要なことだ。
メーカーが上場したことによって、年々販売台数の目標の設定数値が上がっていく。すべては株主に目を向けた販売計画だ。会社は目標台数を完売させるために営業マンに発破をかけ、必要でもない機械まで無理やり買わせる。
その弊害が、必要以上に機械を買わされることによってホールの釘が締まる、ということだ。
この元社員のようにホールに適正台数を販売していれば、ホールへの利益貢献が生まれるのだ。
大手が機械代を20%削減することになったが、それもどこ吹く風。
「うちは減らされず、他社を減らしてもらえばいい、というのがトップの考えでしたね」
パチンコ業界は上場してはいけない業種だ。

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