パチンコ日報

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チューリップに見送られて。パチンコが結んだ老夫婦の最期の約束

とある地方ホールに、毎日のように姿を見せる老夫婦がいた。肩を並べて台に向かうその姿は、常連客にとっては当たり前の風景であり、どこか温かい空気を漂わせていた。

夫婦は若い頃からパチンコが大好きだった。出会いもホール。共に社員として働き、やがて社内結婚を経て家庭を築いた。結婚後、奥さんはホールに残り、旦那さんは建築業界へ転職。その後、自ら土建屋を興し、息子たちが会社を継ぐまで育て上げた。

晩年の2人は、悠々自適な日々の中で、昔と変わらずパチンコを唯一の共通の趣味として楽しんでいた。

そんな夫婦の日常に、ある日突然の出来事が訪れる。夕方、ふだんと変わらぬ様子で来店したおばあちゃんを見た常連客は、思わず声をかけた。

「今日はおじいちゃんは?」

おばあちゃんは静かに答えた。

「今朝ね、亡くなったの。起きたら冷たくなっていて…」

一瞬、空気が止まったようになった。朝に最愛の夫を亡くし、葬儀の準備で慌ただしいはずなのになぜ、こんな日にパチンコを打っているのか。誰もがそう思った。

その疑問に、おばあちゃんは淡々とこう話した。

「おじいちゃんとの約束なの。朝死んだらその日の夕方に、夜死んだら翌朝にパチンコを打ってくれって。供養になるって、いつも言ってたのよ」

葬儀の手配は息子たちが全て進めてくれているため、おばあちゃんにできることは少なかった。だからこそ、おじいちゃんとの「最後の約束」を果たしに来たのだ。

パチンコ好きだったおじいちゃんのために、息子たちは祭壇にも工夫を凝らした。おじいちゃんが間寛平の「開けチューリップ」が好きだったことを思い出し、祭壇をチューリップで飾ろうと考えたのである。

しかし時期が悪く、国内ではチューリップが品薄状態だった。そこで急きょ、オランダから取り寄せることに。チューリップが届く日程に合わせ、葬儀の日取りまで調整したほどだった。

そして迎えた葬儀の日。棺の中は鮮やかなチューリップで埋め尽くされていた。その花々に囲まれ、おじいちゃんはパチンコの思い出とともに旅立っていった。

ホールでの出会いから、結婚、そして最期の約束まで。2人の人生には常にパチンコが寄り添っていた。まるでチューリップが開くように、ゆっくり、静かに、2人だけの物語は幕を閉じた。



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