「ひょっとすると、ホールオーナーがウチに資本参加してくるかもしれない」
ホールオーナーが食品スーパーに関心を持っているというのだ。
パチンコ業界では、多角経営の一環として飲食店や不動産、介護などへの進出が行われてきたが、その中でも比較的成功しているのが食品スーパーだという話を耳にしたことが、ホールオーナーの関心を引いたようだ。
とはいえ、このトップはこれまでホール側からの資本参加の申し出をすべて断ってきた。その理由は、業界の仕組みを聞いただけでも収益構造の非効率さが見えたからだ。新台の導入が不可欠で、そのたびに莫大なコストが発生する。しかも導入した機械がヒットするかどうかは運次第で、外れた場合は即座に「通路」になってしまう。コストを回収できずに終わるケースも少なくない。
それに比べて食品スーパーは「当たり外れ」のない世界だ。何が売れるかを市場や天候、客層で予測し、仕入れに反映させる。
たとえば青果や鮮魚は、その日に仕入れてその日に売り切るのが理想だ。夕方6時までには売り切り、夜9時の閉店を待たずに完売させる。そのためには値引きしてでも在庫を抱えない。これが鉄則であり、商売の基本だ。
青梗菜の切り口が茶色くなっていたら売れ残る。見た目の鮮度が命である。出資話を聞いたトップは、ホールで集客に苦戦しているのは、「茶色くなった青梗菜を並べているようなもの」と鋭く指摘した。機械の鮮度、つまり魅力が落ちているのだ。
このたとえに、ホールオーナーは妙に納得した。さらに踏み込んでみると、スーパーの仕入れにはギャンブル性がない。一定の知識と経験があれば売上と粗利はある程度読める。
対してホール経営は、不確実性が高く、売上予測が立てづらいという不安定さがある。オーナーが実際にトップと面談して感じたのは、今後さらに必要なのは「ランニングコストの徹底的な削減」だということだった。そしてもう一つ、アイデアとして浮かび上がったのが「ホールと食品スーパーの併設」だ。
遊技によって得た出玉で、隣接するスーパーで今日の夕食を買ってもらう。そんな新たな業態だ。もちろん、このビジネスモデルでは等価交換は成り立たない。例えば3000円遊んで2000円分の買い物ができる――そんなイメージのバランス設計が必要だ。
ギャンブル性を抑えながらも、地域に根ざした買い物動線を生み出す。この融合モデルに、ホールオーナーは確信を深めた。
「これは当たる」と口にしたとき、彼の中ではすでに新たなパチンコ経営の形が浮かび上がっていた。
この話を聞いたのは1年以上前のこと。つまり夢物語で終わったのか、まだ構想を練っているのかは分からない。
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