上下スエット姿の60代のその客は誰が見ても男性だが、一見客でもあった。胸には膨らみがあった。店長は事情を聴くと「私は心は女性だから」と釈明した。店長も初めての経験でどうしたらいいか判断が付かず「今後は多目的トイレをお使いください」と返答するしかなかった。
それ以上に、店長が心配したのは、トランスジェンダーを理由に、トイレに隠しカメラが仕掛けられていないか、ということだった。
すぐに女性トイレを封鎖して個室を隅々まで点検した。幸い、カメラが仕掛けられていることはなかった。
当該ホールの様に多目的トイレがあるのなら、その対応でいいだろうが、ない場合はどうなるのだろうか?
「その方の状況やお店側のスタンスなので一概には言えないですね」(LGBT専門家)と明快な答えがない。非常にデリケートな問題のようだ。
トランスジェンダーのトイレ問題では最高裁で判決が出た。経産省に勤めるトランスジェンダーの職員が、職場の女性用トイレの使用を制限されているのは不当だとして国を訴えた裁判で、最高裁は、トイレの使用制限を認めた国の対応は違法だとする判決を言い渡した。
性同一性障害と診断され、女性として社会生活を送っている経済産業省の50代の職員は、執務室があるフロアから2階以上離れた女性用トイレしか使用が認められず、人事院に処遇の改善を求めましたが退けられたため、国の対応は不当だと訴えていた。
今崎幸彦裁判長は「職員は、自認する性別と異なる男性用トイレを使うか、職場から離れた女性用トイレを使わざるを得ず、日常的に相応の不利益を受けている」と指摘した。
ただ、この判例は当該職員が勤める経産省内の建物に限った判例だが、今後公的機関や企業の対応などにも影響を与えるものと見られている。
トランスジェンダーのトイレの悩みに対して話題になったのが、東急歌舞伎町タワーのジェンダーレストイレだ。
同一のトイレ空間内に、女性用トイレ個室(2室)、男性用トイレ個室(2室)、ジェンダーレストイレ個室(8室)、バリアフリートイレ個室(1室)が設けられており、手洗いスペースは共用となっている。1つの空間にさまざまなトイレを混在させたことで、逆に混乱を招いた。
4月の開業直後から「安心して使えない」「性犯罪の温床になる」などと抗議が殺到したためで、わずか4カ月で新たな試みが失敗に終わった。
女性専用エリアと男性専用エリア、多目的トイレに分割する間仕切り工事に着手。ジェンダーレストイレはなくなり、女性用7室、男性用3室、多目的2室の計12室となった。
ホールでジェンダーレストイレが登場する可能性は薄いが、多目的トイレはあった方がよさそうだ。
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