まず、クリーニング業界が直面している問題は、想像以上に深刻だ。どこから手をつけるべきかと悩むほどの課題が山積している。例えば「原材料費の高騰」が83.1%、「水道光熱費の増加」が64.6%といった具合に、経費がどんどん膨れ上がっているのだ。だが、だからといって単純にクリーニング料金を値上げすればいいというわけではない。むしろ、値上げすると顧客はますます遠ざかる。実際、「顧客数の減少」(60.6%)や「顧客来店頻度の低下」(50.1%)、「客単価の低下」(38.4%)などが大きな問題となっており、クリーニング店の経営環境は非常に厳しいものとなっている。
特にコロナ禍は大きな影響を与えた。リモートワークが浸透したことで、サラリーマンたちのスーツやYシャツの需要が激減したのだ。かつては「月曜から金曜まで毎日クリーニング!」なんて需要があったものだが、今ではスーツすら着なくなった人が多い。その上、Yシャツに至っては形状記憶シャツの登場で、もはやクリーニングに出す必要すらなくなっている。だが、最も打撃を受けたのはネクタイだ。クールビズのおかげで、夏場はノーネクタイが当たり前となり、ネクタイのクリーニング依頼はほぼ絶滅状態である。
個人向けのクリーニング需要は右肩下がりが続く一方で、クリーニング業界を支えているのが法人契約での制服クリーニングだ。特に小売業やファーストフードチェーンの制服クリーニングは一定の需要がある。しかし、ここでホール企業の話に戻る。
ホールのクリーニング依頼も以前は盛んだったが、どうやら経費削減の波が押し寄せているようだ。以前はシャツと制服の上下がセットでクリーニングに出されていたのだが、最近ではシャツは従業員が自宅で洗うようになり、クリーニングに出されるのはアウターだけに。さらに、クリーニングの頻度も減少し、売上はなんと半減してしまったという。これを聞いたときには、ホール企業が涙ぐましい経費削減に走っている様子が目に浮かぶ。
しかし、そんな中でもクリーニング業界において好調な分野が存在する。それは風俗店やラブホテルだ。吉原ではインバウンド景気で賑わいを見せており、その影響で風俗店のコスチュームのクリーニング依頼が増加しているという。また、ラブホテルのシーツやタオルも頻繁にクリーニングに出されている。この話を聞いたとき、クリーニング業界が実は各業界の景気のバロメーターになっているのだと気付かされた。
パチンコ業界が好調であれば、従業員たちが自宅でシャツを洗う必要もなく、清潔な制服で仕事に励むことができるのだろう。だが、現実はそう甘くない。クリーニング業界に転職したホール企業社員の話を聞きながら、経費削減の現実と、業界間の微妙なバランスを感じずにはいられなかった。

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