現在提示されている案の中には、消費税率を一時的にゼロにするという、極めて大胆な政策も含まれている。これが実現すれば、消費が爆上がりし、それに伴う景気回復が期待できるという論理に基づいている。
この減税効果を実証した事例として注目されているのが、名古屋市である。河村たかし市長の時代に市民税を10%から最終的には5%まで引き下げる政策が実施された。この減税措置で、名古屋市の税収は減少するどころか、10年間で約800億円増加したと報告されている。この増収は、減税によって市民の可処分所得が増え、それが消費活動の活性化へとつながった結果と考えられる。税率を下げても景気の拡大と税収増が現れた。
名古屋市の例はあくまで市民税の減税だが、仮にこれが全国規模で消費税に適用されたとすれば、その経済効果は一層大きくなると予想される。とりわけ消費税はすべての取引にかかるため、消費者にとって直接的な負担軽減となる。これにより、個人消費が一気に活発化し、特に家電製品、自動車、住宅といった高額商品の売れ行きが大幅に伸びる可能性が高い。
消費の拡大は当然ながら企業の売上増につながり、結果として企業の利益も改善される。加えて、消費税納付義務が軽減されることにより、特に中小企業の資金繰りが改善されると見られる。こうした企業活動の活性化は、雇用の拡大や賃上げの原資確保につながる好循環を生む。政府が掲げる賃上げ政策にも追い風となるはずだ。
このように、消費税ゼロはパチンコ業界にも好影響を与えると見る向きもある。実際、あるパチンコメーカー関係者は、「可処分所得が増えれば、間違いなくパチンコをする人が増える。需要があればすぐに増産体制をとれるメーカーが強みになる」と語っている。しかし、こうした見通しには楽観的過ぎる側面も否めない。
現実には、パチンコから一度離れたユーザーが再びホールに戻ることは容易ではない。現在のパチンコ機の開発は出玉性能の向上に過度に偏重しており、いわゆる「爆裂機」志向が強い。こうした機種では1個返し仕様となり、おカネの消費が激しいため、一般客の遊技継続を難しくしている。この機械作りを改善しないままでは、いくら可処分所得が増えようとも、パチンコ業界への回帰は限定的と思われる。
パチンコが再び娯楽として一般層客に受け入れられるためには、少額でも遊べる4円パチンコの環境整備が不可欠だ。
現実に戻ろう。
消費税ゼロの経済効果は魅力的である一方で、その実現には極めて高いハードルが存在する。現在、消費税は年間約22兆円前後の税収を生み出しており、これは社会保障の基幹財源となっている。この財源を穴埋めする手段を見出さない限り、政治的にも財政的にも現実味は乏しい
ゆえに、いくら「景気回復の特効薬」としての夢を語っても、実際に消費税をゼロにできる可能性は限りなくゼロに近いと言わざるを得ない。政治的アピールとしての効果はあっても、現実的な財政運営を考慮すれば、この政策は夢物語に過ぎない。

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