開いてみると、そこには1枚の写真が添付されていた。ビニールに包まれた何かが写っている。ぱっと見はよくある「おしぼり」のように見えたが、画面越しでも明らかにサイズ感がおかしい。おしぼりにしては大きすぎる。それは、手のひらサイズどころか、フェイスタオル並の大きさに見えた。

続けて送られてきたメッセージには、こう書かれていた。
「このフェイスタオルを、夏の総付け景品として配れ。キンキンに冷やして渡せば、お客さんは絶対に喜ぶ」
その瞬間、2代目社長は「さすがだな」と思わずうなった。
先代社長は今、入院中の身であり、体力的にも以前のように自由に動ける状態ではない。入浴も制限され、毎日、看護師が用意するホットタオルで体を拭くのが日課となっている。
それを使ってみて、体を覆う包容感、温かさの持続、そして何より「心地よさ」が格段に違うことに驚いたという。肌に直接触れるモノだからこそ感じられる、実感。それが、そのまま発想へと転換された。
「これをうちの店で、今度は“冷たいバージョン”にして配れば、きっとお客さんは驚くし、喜ぶはずだ」
2代目社長はメッセージを読みながら思った。
「ただの総付け景品ではない。親父は、“体験”を渡そうとしているんだな」
普通のおしぼりではなく、あえて大きめのフェイスタオル。それを冷やして配るという行為そのものが、「おもてなし」や「気配り」になる。冷たさ、大きさ、質感──手にした瞬間の驚きと、実際に使ったときの気持ちよさ。それこそが、お客様の記憶に残る。
2代目社長の頭の中にはすでに光景が浮かび始めていた。酷暑の日、来店したお客様にスタッフが保冷ボックスから冷えたフェイスタオルを取り出し、笑顔で手渡す。お客様はそれを受け取り、思わず「うわっ、冷たっ!」と声を漏らす。そして広げてみて、そのサイズにまた驚く。
「これは持って帰っても使えるな」「気が利いてるね」と話すお客様の姿まで、脳裏にリアルに描けてしまうのだった。
今後の導入を見据え、2代目社長はさっそく業者との打ち合わせを検討し始めた。タオルのサイズ、素材、デザイン、そして冷却方法。どこまで“体験”にこだわれるか。そうした細部が、店の印象を決めていく。
何気ない一通のLINE。
しかし、そこには90歳を超えた創業者の「現場感覚」と「お客様目線」が凝縮されていた。病床にありながらも、誰よりも商売の本質を見つめているその背中が、今もなお2代目を突き動かしている。
タオル一枚。それだけで、お客様の心をつかもうとするこの一手が、次の時代を切り開く起点になるかもしれない。

※コメントには必ずハンドルネームを入れてください。匿名は承認しません。コメントがエントリーになる場合もあります。
お客の事を考える誠実さには頭が下がります
ピンバック: 煎餅
ピンバック: おせまま
ピンバック: アホくさ
流石、自分は養豚場業者で客を豚扱いする人は違うね。
ピンバック: トクメイ
ピンバック: 煎餅は運営のサクラ
無いからこんなんなってるのに
総付景品なんかしないでいいから出玉たのむわ
ピンバック: いつもの誤魔化し
ピンバック: 名無し
総付け景品の話ですが、金額上限に規制があるから、100円ショップの商品くらいが限度ですよねー。
ピンバック: メイン基板
暑い日はありがたかったな。今やあっても薄っぺらな紙おしぼり。
コストだけ考えた結果なんだろう。あればいいだろう、置けば打つだろう。客の事は二の次
ピンバック: 定年リーマン