期待と不安

販売したメーカーの営業マンは「この機械はすごく荒い機械なので、休眠中のギャンブル層を呼び起こすことができますよ」と声を潜めた。



全国ホールの１０％程度しか導入されていない。



業界は手軽に遊べる機械にシフトする中で、時代に逆行するような機械である。



普段は甘デジしか打たない常連客だった。



新台という珍しさでその台に座った。もちろんその機械特性も分からないままに。すると1500円で連チャンモードに突入した。



訳も分からないまま、連チャンが続き176連チャンしたところでその台を立った。それで空いている違う台に座ったところ、これまた連チャンモードに突入。



気がつけば3台で10万発も出していた。



等価交換の店である。



小遣いは奥さんに管理されている。このまま換金して家に帰るのが怖くなった。奥さんはパチンコをしていることは知っているが、こんな大金を見た日には没収されてしまう恐れがある。



そこで全玉貯玉した。



この時ほど貯玉がありがたいと思ったことはなかった。



あるコンサルは「この機械は自分的には買いだが、信用のない店で使うのは難しい」という。



かつての一発機が好きだったチェーン店の関係者はこう話す。



「釘で勝負する機械ではなかったので、扱いづらい、と思ってチェーン店には1台もいれていません」



一方で導入しているホールの店長の評価はこうだ。



「業界を立て直すには必要な機種。利益にも大いに貢献してくれる。本当にお金を持っているギャンブラーには打ってつけの機械ですね。この台はデータからは波が読めないので、空き台が出るとすぐに埋まりますが、稼働より粗利の取れる機械だと思います」



10万発貯玉した前述のお客さんには、一つの心配ごとがある。



一度は現金を手にしたいという思いもあった。



しかし、貯玉を引き出してプレイすることは、金銭感覚が麻痺してしまうので、すぐに貯玉を使い果たしてしまうのではないか、との不安である。



導入ホールの関係者も規制の対象になることを恐れている。



お客もホールも悲喜こもごも。



大手から発売されたことに意義がある。



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