背景には、かつての「学生は学業に専念すべき」という社会通念がある。
しかし、大学進学率の上昇、他の公営競技との整合性などを踏まえ、法は年齢を基準とする合理的な形に改められた。成人であれば、大学生であろうと社会人であろうと、自己責任で馬券を買える――そんな時代に変わったのだ。
では、パチンコ業界はどうだろうか。
風営法では18歳未満の立ち入りを禁じている。しかし18歳という年齢には微妙な曖昧さが残る。高校を卒業した18歳は問題ないが、在学中の18歳は、法的にはともかく、社会的には「子ども」の範疇にある。実際、警察庁も「高校生の入店禁止」を指導要領として明示しており、ホール側も自主的に「高校生お断り」の概念がある。
ところが今回、前例のないケースが起きた。
高校を2年留年し、20歳で高校3年生という若者が、パチンコ店で遊技していたところ、通報により私服警察官に補導されたのだ。
年齢的には問題がない。成人であり、風営法上の制限にも触れない。しかし「高校生」という身分が、社会通念上の「入店禁止」に引っかかる。
学校側としては「法的にセーフでも教育上アウト」という立場を取らざるを得ない。一方、ホール側にすれば「20歳の成人が遊技して何が悪いのか」と言いたくもなる。
このケースは、法律と常識のはざまに生じた空白地帯を象徴している。
業界関係者に聞いても、明確な対応マニュアルは存在しない。風営法には「高校生」という文言が一切なく、ホールもその都度、警察や自治体と協議するしかないのが実情だ。
では、どうすべきか。
答えは明快である。
「年齢は法的に問題なくとも、高校生である限り入店は断るべき」だ。
理由は二つある。
ひとつは、警察行政が高校生禁止を実質的な運用ルールとしている以上、ホール側がこれを破れば「風紀を乱す店舗」として行政指導の対象になりかねないからだ。
もうひとつは、社会的信用の問題である。成人であっても、高校生がホールに入れば、世間は未成年が遊技している、と受け取る。法ではなく「見られ方」が、業界の信頼を左右する。
20歳の高校生という存在が突きつけたのは、法の盲点ではなく、社会の常識そのものだ。
※コメントには必ずハンドルネームを入れてください。匿名は承認しません。コメントがエントリーになる場合もあります。