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高卒採用の最前線。物流とホール業界、人材獲得競争の現実

9月のある日、ホール企業の人事担当者が都内で開催された高校生向けの合同企業説明会に足を運んだ。同社はこれまで大卒採用に重点を置いてきたが、高卒採用には本格的に取り組んでこなかった。今回は「敵情視察」の意味合いも含め、各社がどのような条件で高校生を惹きつけているのかを確認するためだった。

この説明会は、高卒採用の選考解禁直後に行われるもので、2026年卒の高校生を対象とした企業と直接対話できる貴重な場である。求人票だけでは伝わらない会社の雰囲気や社員の声を聞けるほか、職場見学やインターンに参加できる企業を見つける機会にもなる。

背景には「2025年問題」がある。

第一次ベビーブームで生まれた団塊の世代が75歳以上となり、日本は本格的な超高齢化社会に突入する。労働力人口の減少と社会保障費の急増が懸念され、各業界は深刻な人手不足に直面している。

特に高校新卒者への採用ニーズは急激に高まり、2025年3月卒業生の求人倍率は過去最高の4.10倍に達している。企業は初任給の引き上げや福利厚生の充実、教育制度の整備など、採用力強化にしのぎを削っている。

会場を歩いていた人事担当者は、ある物流会社のブースで足を止めた。そこに掲示されていた条件に衝撃を受けたのである。

高卒初任給がなんと27万円。しかも採用人数は70名と規模も大きい。自社の大卒初任給を上回る水準に思わず腰を抜かした。さらに食事付きの社員寮が無料で提供されるとあり、地方出身の若者でも安心して首都圏に上京できる。

家賃や食費の負担がなければ、生活費が大幅に抑えられる分、遊びや貯蓄に回すことができる。給与・福利厚生の両面で、自社が大きく見劣りする現実を突きつけられた瞬間だった。

物流業界はトラック運転や配送など自動化が難しい業務が中心であり、人材確保のために高水準の待遇を提示せざるを得ない。一方、ホール業務は無人化・省人化の余地が大きい。人事担当者は「待遇面での真っ向勝負は難しい。人手不足対策は自動化による効率化で対抗するしかない」と考えさせられた。

ちなみに全国ホールチェーンの高卒初任給は22万6500円となっている。

こうして比較すると、物流業界の「高卒27万円」という数字がいかに高いかがわかる。確かに物流は体力的に過酷で勤務時間も不規則になりやすい。5万円の差を若者がどちらを選ぶかは一概に言えない。過酷な労働環境より、楽さや安定を重視してホール業務を選ぶ人もいるだろう。

いずれにしても、労働人口減少のなかで「人をどう確保するか」は業界の存続を左右する最大の課題となっている。待遇で勝負する物流業界と、自動化による効率化を模索するホール業界。その対照的な戦略は、日本の産業構造の縮図とも言える。



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