「10年前なら受けていたかもしれない。しかし、ロードマップを描き、再生まで導くには最低でも10年かかる。体力的にもそこまで面倒を見切れない。手遅れだ」
その一言で交渉は終わった。
経営の神様が言う10年のスパンとは、単なる比喩ではない。法整備や事業再構築に要する現実的な時間軸を意味している。その象徴的な例が、カジノを含む統合型リゾート(IR)法案だ。
IRカジノ法案は、2013年12月に超党派のIR議員連盟によって国会に提出された。翌2014年に審議入りしたものの、衆院解散で廃案。翌2015年に自民・維新・次世代の3党が再提出したが、公明党の反対や維新の分裂などで棚ざらしとなった。ようやくIR推進法が成立したのは2016年12月、IR実施法が通ったのは2018年7月である。
それからさらに3年後の2021年9月に大阪IRの事業者としてMGMリゾーツとオリックスの共同グループが決定。政府が正式に大阪を候補地として認可したのは2023年4月。夢洲での着工は2025年4月、開業予定は2030年末──。最初の法案提出から実際のオープンまで、実に15年以上を要する計算になる。
つまり国家レベルの産業構想ですら15年かかっている。
これが現実だ。
パチンコ業界の再生にしても同じことがいえる。例えば、パチンコ業法を制定し、所管を警察庁から経済産業省に移して遊技から産業へと転換する。そのような方向性を取るにしても、法制化だけで5〜10年はかかる。短期的な景気回復策ではなく、国家政策並みの持久戦が必要なのだ。
しかし、経営の神様が呆れたのは時間ではなく、業界そのものの体質だった。
「パチンコ業界は、射幸性を上げることが自分たちの首を締めていることに気づいていない。小学生でもわかる理屈だ。抑止力が全く働いていない。出玉を煽れば一時的に客は来るが、結局ファンは離れる。セブン機の登場以降、業界は“バカ製造機”に依存し続けてきた。まず、ここから脱却することだ」
業界の神様とも言われる人物のこの発言は、痛烈だが的を射ている。結局のところ、射幸性を高める出玉競争に明け暮れた30年のツケを、いま払わされているのが現実だ。
「10年では足りない」
それは単なる年数の話ではない。経営者の意識改革、制度改革、ファンとの関係再構築──すべてに長い年月が必要という意味だ。
パチンコ業界が再び娯楽として信頼を取り戻すには、出玉よりも誠実さを競う時代に変わらなければならない。経営の神様が投げた“匙”の重みを、業界がどこまで理解できるかが問われている。
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