ホール経営者・べラジオの林田氏の波乱に満ちた実体験をもとにした作品だ。日報では映画が上映された年の2023年7月20日にこの映画について記事を書いたのだが、今年11月半ばに入ってから突然アクセスが急増し始めた。
なぜ2年前の記事が今になって読まれるのか。理由はすぐには分からなかったが、10日ほど様子を見て、検索してみて腑に落ちた――この映画がAmazon Prime Videoで視聴できるようになっていたのだ。視聴者が作品を見て背景を調べ、過去のエントリーを掘り起こしたと考えるのが自然だろう。
制作費は当初100万円と言われていた。だが、出演者のほとんどがノーギャラ、文字通り「手弁当」で参加していた。その現状を知った林田氏は、自腹で交通費や弁当代を上乗せし、最終的に300万円で撮り切ったという。映画のサイズに比べればあまりに小さな予算。しかし、そこには現場の熱量が詰まっていた。
ストーリーの核は、倒産寸前の実家のホールを継ぐ杉村(劇中名)の姿である。反発し投げやりだった従業員の垣内は、杉村の行動力に触れ次第に変化し、後には右腕、そして社長となった垣内氏の姿でもあった。
劇中には、のちに業界で「べラジオ」の名前を広める原点となるエピソードも盛り込まれている。
象徴的なのが、超ミニスカートでへそ出しという大胆なユニフォーム導入のシーンだ。ホールのイメージを覆す攻めの営業策であり、業界では誰も試したことのない挑戦だった。
しかし、社員たちは猛反発する。「お色気商法に見られる」「キャバレーじゃない」「トラブルの原因になる」「ストーカーに狙われる」「女の子が嫌がるに決まっている」――否定の言葉が並ぶ。
杉村はその空気に一喝する。
「やってもいないのに否定するな。決めつけるな。やってみな分からんやろ!」
ところが、当の女性スタッフは意外にも好意的で、「かわいいから好きです」と笑顔で賛同した。こうして“エロかわ”コスチューム戦略が走り出した。
もう一つの象徴的な企画が、60歳以上の常連客を対象にした温泉旅行だ。これも社員から猛反対を受けたが、杉村は押し切った。
旅行代理店を使わず、ホール自身が代理店役を担い、参加費は格安。宴会ではスタッフがホストとして客をもてなし、心からの時間を提供した。現場の負担は大きかったが、その濃密な体験がシニア客の心を掴んだ。
映画「大阪カジノ」は、題名のようにきらびやかなカジノの物語ではない。離反寸前の社員、崩壊寸前のホール、批判の嵐の中で「顧客をどう喜ばせるか」を信じた一人の経営者の物語だ。
奇抜なアイデアは、単なる話題づくりではなく、顧客と向き合った末に生まれた武器だった。その積み重ねがファンを生み、べラジオというブランドを押し上げていったのである。
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