教室に展示するにはあまりに大きく、子供ひとりで運べる代物ではなかった。結局、作品は家族のワンボックスカーで運搬され、校舎内に入れる際には台車まで動員された。
その子の親戚がパチンコホールを経営していた関係で、使われた素材はなんと中古のパチンコ台だった。しかもただの一台ではない。ギャラクシーの折りたたみスマホのように、2台のパチンコ機を蝶番でつなぎ合わせた「2つ折りパチンコマシン」だったのだ。
右側の台は通常通りパチンコが打てる構造で、左側の台は画面部分にモニターが組み込まれていてテレビが映るという仕様(実際テレビが映るわけではない)。つまり、「遊技しながら映像も楽しめる」という夢のような装置を子供が夏休みの宿題で作り上げてしまったのである。
なぜ小学生がそんなアイデアにたどり着いたのか。ヒントは、家族旅行中の車内体験にあったという。ある夏の日、家族で遠出した際に首都圏特有の激しい渋滞に巻き込まれた。
車内での暇つぶしといえば、ゲームやスマホが定番だが、それだけでは親のイライラを抑えきれない。そこで「お父さんが好きなパチンコができれば渋滞も苦じゃなくなるのでは」と考えた結果、生まれた発想だった。
もちろん、実際に走行中の車内でパチンコを打つわけにはいかないが、「もしも」が形になった瞬間でもあった。
この自由工作は、単なる話題性にとどまらず、業界にも一石を投じるヒントになりうる。
現在のホール環境は、娯楽の多様化や若年層の遊技離れにより、以前ほどの吸引力があるとは言いがたい。そんななか、「パチンコ×何か」という融合は、もはや業界の生き残り戦略として必要不可欠な視点になっている。
たとえばこの“2つ折りパチンコ台”の発想を応用し、実際のホールに「パチンコをしながら動画コンテンツを楽しめる」機能が備わっていたらどうか。もちろん音声や視界の問題、著作権や集中力の分散など課題は山積みだが、少なくとも“そこまでしてでも遊技空間を楽しもう”という一部層へのアプローチにはなるだろう。
遊技人口が減り、業界が岐路に立たされている今こそ、常識にとらわれない発想を拾い上げる姿勢が問われている。ときには、未来を担う小学生の自由研究にこそ、業界再生のヒントが隠れているのかもしれない。
未来のホールに必要なのは、高額投資の新台ではなく、小学生のひらめきかもしれない──そんなことを思わせる、夏の一幕だった。
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