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甘えの環境が覇気のない社員を生む

兄はホール店長、弟は都内にあるバス会社の運航責任管理者を担当している。兄弟で互いの仕事のことを話す機会があった。

「ウチは乗客からの苦情が非常に多い。運転手のマナーに関することが特に多い。ロータリーはゆっくり回るように指導していても、乗客がふらつくぐらいのスピードで回ったり、片手ハンドルだったり…」と弟の方が口火を切った。

これに対して兄のホール店長は「ウチでは従業員へのクレームはほぼない。それだけ教育しているから」とバス会社のクレームの多さに耳を疑った。

なぜ、安全運行第一を心掛けなければならないバス会社にクレームが多いのか? それには訳があった。

バス会社も運転手不足という課題を抱えているが、問題を起こすのは中途採用でトラック運転手から転職した40~50代が多いそうだ。新卒採用で自社養成した運転手は会社の指導通りの運転を心掛けるのだが、中途で入社しクセのあるたベテラン運転手にルール違反の傾向が強い。

兄弟で話していて分かったことは兄のホール企業は新卒採用中心で、そもそも50代になっても表周りをしているホールスタッフそのものがいない。この違いがホールスタッフにはクレームが少ない原因ではないか、と結論付けた。

ひと昔前のホールには中高年スタッフが多かったが、新卒採用と共に、その層は一掃されたが、新卒採用も30年以上続くと、新卒1期生は50代に到達している。出世して役職者になれば表周りすることもないが、大量に採用してきた大手ともなると50代でポストも与えられていない社員も当然出てくる。

課題は50代で表周りをさせるわけにもいかないので、事業の多角化でそちらに転籍する必要も出てくる。

大手はそういうことができるが、問題はホール専業の中小だ。

あるホールには50代で表周りしているスタッフが3人いる。役職は主任が1名で、残りの2名は副主任だ。仕事に対する情熱は薄れ覇気はない。

3人に共通していることは独身で、借り上げ社宅住まいということだ。役職もこれ以上上がらず、給料も上がっていないのに辞めないのは、今の生活が楽だからだ。

社宅の自己負担は月1万円。この制度が従業員の覇気をなくさせていることに気づいたオーナーは買い上げ社宅の廃止を決断した。経過措置として、1万円の負担を3万円に上げ、5年後には全額自己負担にすることにした。

甘える環境があるから、覇気のない社員が増殖すると結論付けた。ホール企業に退職金制度がなかったのは、そもそも定年まで勤めあげる社員がほとんどいなかったからだが、今は福利厚生も充実したことが、辞めて欲しい社員が最後まで居残る弊害も生んでいるようだ。



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