ビール業界のマーケティングはなかなか面白い。
酒は20歳になってから飲めるわけだが、成人以上で酒を飲む習慣がある人とない人ではきれいに半分に別れるそうだ。飲む人でほぼ毎日飲む人数は約2000万人。ビール業界では成人の半分を取りこぼしているわけだが、そこを掘り起こすためにチューハイ文化が貢献している、という。
海外ではアルコールを薄めて飲む文化がないそうで、アルコールをソーダなどで割って飲むことで、アルコールが苦手な人を開拓して行っている。ハイボールが人気になっているように、割ることがハードルを低くしている。
ビール業界で近年のヒット商品がノンアルコールビールだ。一般人の感覚からすると飲酒運転防止のためのビールと思われがちだが、開発の意図は全く違っていた。
これはビールを飲む若者を育成する目的があった。酒は20歳からだがこれならノンアルなので未成年でも飲めるというわけだ。つまり、若いうちからビールの味に慣れさせる意味合いがあった。ノンアルビールは成人になる前の助走のようなものだ。
こんなことは教育的見地からも表立って言えることではない。社会からは批判を浴び、会社の企業イメージまで損なってしまう。
さらにノンアルビールには、昼間のランチタイムや仕事中に飲んでもらう意味合いもあった。酒は仕事が終わって夜に飲むのが一般的だが、昼間の市場を開拓する目的もあった。昼間ノンアルビールを飲んだ人は、夜はノンアルではなくほぼアルコールが入ったビールを飲む、というデータもある。
飲み屋以外のシーンで、ビールと親和性が高いのはプロ野球観戦やバーベキューだが、実は一番親和性が高いのはパチンコ店だという。
「パチンコしながらビールを飲みたい、というアンケート結果もある。酒を飲みながら遊技することはどこのホールも禁止しているが、ビールを飲みながら打つことができれば、稼働率も上がるはず。海外のスタジアムではトラブル回避のために、アルコールを飲めないエリアを分けている。現在、パチンコを打ちながらタバコが吸えない状態で、ビールを飲みながらパチンコが打てる店が、渋谷や新宿にできると流行ると思う」
ビール業界では未成年者でも飲めるノンアルを開発してビールを飲む習慣づけをしているが、パチンコには未成年へのアプローチはどうしても遅れている。
射幸性の追及に血道を挙げるばかりだから、そういう発想も生まれない。
景品でアルコールが提供できるようになって30年以上経つが、当初から店内飲酒は禁止されている。ノンアルビールなら、打ちながら飲みたいユーザーの要望に応えることができる。

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