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大手にはできない“コメの福利厚生”という差別化戦略

新米価格の高騰が止まらない。昨年から続く流れはこの秋も衰えを見せず、スーパーの店頭では5キロ袋が4,500円から5,000円台という高値で並んでいる。生活必需品である米の値上がりは家計に重くのしかかり、庶民の食卓に直結する問題となっている。

こうした状況を逆手にとったのが、あるホールオーナーだ。

「社員に美味しい新米を食べさせたい」という思いから、知り合いのルートで地元農家から30キロ入りの玄米を150袋、総量4.5トンを一括で買い付けた。

社員はそれを近所のコイン精米所で精米し、家族の人数に応じて分配している。いわば現物支給型の福利厚生である。

特筆すべきことは、この取り組みが会社経費ではなくオーナー自身のポケットマネーで行われている点だ。これは単なる“コメの支給”ではなく、「社員とその家族の生活を直接支える」という経営者からの強いメッセージである。

だからこそ、受け取る側の印象も格別だ。

オーナーのモットーは「大手ホールには真似できないことをする」。確かに、全国にチェーン展開する大手ホールが同様の施策を実施するのは現実的ではない。

従業員が1万人を超えるような企業が全員にコメを支給すれば、莫大なコストと物流の手間が発生する。スケールメリットを活かす大手には強みがあるが、逆にこうした細やかな施策は“スケールの大きさ”が障害となる。

一方、中小ホールは機動力と柔軟性が武器だ。オーナーの裁量ひとつで即座に決断でき、社員数が限られているからこそ実現できるスピード感がある。この「大手との差別化こそ生存戦略」という視点が、今回の試みの本質ではないだろうか。

では実際、どれほどの量なのか。30キロ袋を150袋=4.5トン。精米すれば約10%減るが、それでも圧巻の量である。試算すると、4人家族が1日0.6キロ食べるとして7500日分、約20年分に相当する。社員100家族に分配すれば75日分、つまり2カ月半の主食がまかなえる計算になる。

令和の米騒動と呼ばれるほどの価格高騰が社会問題化するなか、コメの現物支給は一種の時代対応型福利厚生だ。社員にとっては給与明細の数字よりも、家に帰れば米袋が置かれているという実感の方が強い。

さらに家族全員がその恩恵を受けるため、「この会社に勤めていてよかった」という気持ちが自然に芽生える。大手が制度や数字で差をつけても、この感覚はなかなか生み出せない。

縮小する業界環境の中で、中小ホールが生き残るには「大手にはない体験」を社員にも顧客にも提供することが鍵になる。コメの支給という一見アナログな施策は、まさにその象徴だ。

規模では勝てないが、柔軟性と独自性では勝てる。令和のパチンコ業界において、その差別化こそが明暗を分けるヒントがここにあった。



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