ある日、スタッフが通路を移動中に、誤ってお客さんが積んでいた3箱の玉箱にぶつかってしまった。数千発もの玉が床一面に散乱し、店内は一時騒然となった。
もちろん不注意はスタッフ側にあった。客は淡々としていたが、怒りが収まらなかったのは店長の方だった。
店長は「反省させる」と称して、そのスタッフに罰のような業務を命じた。内容は駐車場の草むしり。熱中症のリスクを考え、夕方に行わせたとはいえ、スタッフからすれば処罰そのものにしか映らなかった。まるで昭和の部活動で、ミスをすればグラウンド10周を命じられるような感覚だ。
今の時代、こうした懲罰的指導は体罰やパワハラとして厳しく問われる。納得がいかなかったスタッフは弁護士に相談。結果は「勝ち目あり」。訴訟を起こす前に示談が成立し、スタッフは退職と引き換えに慰謝料を手にした。店長の“教育”のつもりが、逆に会社のリスクを高める結果となったのである。
この騒動が落ち着いたのも束の間、同じホールでまた新たな問題が勃発する。
このホールには古くからの規則があり、アルバイトや従業員の親族はその店では遊技できない決まりとなっていた。昔の業界では従業員と客が結託して不正を行った事例があったがその名残であろう。
そんな中、ある女性が新たにアルバイトとして採用された。すると間もなく、彼女の父親が連日のように来店し始めた。いや、実際には父親は昔からの常連で、娘の就労を機にたまたま問題が表面化したにすぎない。
店長は女性スタッフに対し「あなたが勤務中はお父さんに来店を控えてもらえないか」と頼んだ。
しかし、父親は頑として応じなかった。長年通ってきた店を、娘が働くからという理由で出入り禁止にされるのは納得がいかないという。常連としてのプライドもあった。
警告を重ねても父親は来店を続け、ホール側はついに「出入り禁止」の最終措置を取る。
しかし、父親は黙って引き下がらず弁護士に相談。事態は再び法的トラブルに発展しそうになった。
困ったホールが示した折衷案は、娘を系列の別店舗へ異動させるというもの。だがその店舗は今の店舗から30分以上離れ、通勤負担が増す。
父親は「なぜ娘が不利益を被らねばならないのか」と納得せず、関係はさらにこじれた。
結局、女性スタッフは居心地の悪さから退職し、また一人貴重な人材を失うことになった。
アルバイト確保が難しいこの時代、スタッフ教育のつもりがハラスメントに問われ、常連対応の不手際が人材流出につながる。
かつての体育会系的なノリや古い慣習は、現代では法的リスクに直結する。「ちょっとしたこと」が大きな事件簿となるのが、まさに“ハラスメント時代”のホールの現実なのである。
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