冷静にそう言い放ったのはとあるホール企業の営業部長でした。
「僕は今45歳ですから後15年のうちに業界がなくなることはないでしょう。うちの会社も悪くは(業績が)ないですから生活はできますしね。問題はその後のことですよ。今の店長たちはまだ若いし、とは言え会社が企業規模を拡大するとは考えにくいですから、頭打ちですよね。結局異業種に進出して雇用の放出を防ぐくらいしか手はないのではないでしょうかね」
私はどちらかといえば理性より感情が先立つタイプの人間なので、営業部長の話を聴いているうちに少し悲しい気持ちになっていくのが自分でもよくわかりました。しかしながら彼の言うことはほぼ間違ってはいないのでしょう。私も明確に否定することはできませんでした。
私はホールで認知症のご老人のお世話をする副店長や、人手不足で遅くまで残業をせざるを得ないスタッフたちと直接お付き合いするものですから、感情がそちらを向いてしまいがちになります。パチンコがいいとか悪いとかいう議論よりもそこで働いている人間たちのことを考えると心は「パチンコはあり続けて欲しい」とついつい願ってしまうのです。
私は黙って彼の話を聞き続けました。
「それでも僕ら毎日めちゃくちゃ仕事しているんですよ。先のこと考えても仕方がないから今日一日をみんな必死になって仕事しているんです。口には出しませんけど会社に恩も感じているし、お客さんにだって真剣に向き合っていますよ。でも僕らにできることは限られているじゃないですか。だから先のことは話さないんです。そんな暇じゃないですし」
彼が勤める会社はコロナ禍の2年こそ減収減益になったがそれを除けば前期も業績は増収増益を果たしたのだと言う。
「もうお客さんはパチンコを遊びだと思ってくる人はいませんよ。僕らの意思に反してメーカーさんもお客さんも博打化を望んでいますから。先生得意の人情論はもう通用しなくなりました。それで拍車をかけるようにスマパチ、スマスロでしょ? 今は機械メーカーが主導権を取るのかそれともユニット会社が主導権を取るのかで揉めているらしいですよ。また誰かが大儲けするんでしょうね。ま、僕らには関係ないですけど」
やはり彼の口調は冷静でした。
それでも私は心のどこかで「そんなことはない」と強がりを言っているのでした。
先のことはわからないので、楽観も妄信もしませんが、ただやれることをやるのみなのです。

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