「昔は、浴衣姿でパチンコを楽しむ観光客がたくさんいましたが、今やそんな光景は絶滅しました。温泉地に来てまでパチンコを打つという習慣が完全に消えてしまったんです。今では地元の常連客だけが細々と遊びに来るのが現状です」とホールオーナーは嘆く。
温泉街の夜景が変わったのは、客層の変化が大きい。観光協会によると、客数自体はそれほど変わっていないのに、なぜこんなことが起こっているのか。まず、会社の慰安旅行のような団体客が姿を消したことが一因である。かつての温泉街は、賑やかな宴会が繰り広げられ、夜になると団体客が外に繰り出していた。しかし、今の温泉街は静まり返り、夜の活気は消え去った。
現在の温泉街は、20~30代の若者が主な客層となっているが、彼らは宿に到着すると、温泉に浸かり、食事を楽しみ、その後は外に出ることもなく、宿の中で全てを完結させてしまう。これが、温泉街の夜を一層寂しくしているのである。
かつては夜の10時、11時まで営業していた土産物屋も、今では夜の6時にはシャッターを下ろしてしまう。お土産屋街はすっかりシャッター通りと化し、若者が外に出歩くこともなくなった結果、夜の温泉街はまるでゴーストタウンのようである。
団体客が減少したことで、最も打撃を受けているのが温泉コンパニオン派遣会社だ。宴会が減れば、当然コンパニオンの需要も減る。かつての温泉街の夜を支えていたコンパニオンたちは、今や出番を待ちながら、スマホで暇つぶしをしているのが現状だ。
さらに、若者が増えたことで、温泉饅頭の売り上げもピーク時の5分の1にまで落ち込んだ。若者たちは、昔ながらの和菓子には見向きもせず、インスタ映えするスイーツを好むからである。外国人観光客も増えてはいるが、彼らもまた夜は宿で過ごすことが多く、温泉街の活気を取り戻す手助けにはならない。
温泉街の商売は、外へ出歩く観光客がいなくなったことで売り上げを落としている。まさに温泉街が潤わない時代となっているのだ。
昼間は観光客で賑わう熱海温泉も、夜になると一気に閑散としてしまう。距離が近い分、日帰り客が多いのがその理由である。有馬温泉も夜の人出はなく、静まり返っている。
このような状況下で、外へ出歩く習慣を取り戻すためのヒントは、草津温泉にある。湯畑がライトアップされ、観光客がその美しい光景を写真に収めるために外に出てくるのだ。こうしたシンボリックな観光スポットがない限り、温泉客を夜の街に連れ出すのは難しいだろう。

そして、温泉街のパチンコについては、若者がパチンコを打つ習慣を持たないため、再生は非常に困難である。温泉とパチンコ、かつては共存していた二つの文化は、今や別れを告げる時が来ているのかもしれない。

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