岩崎夏海氏と聞いてもピン、と来ないかもしれないが、大ベストセラーとなった「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の作者といえば、分かりやすい。
もしドラが売れたお陰で、原書の「マネジメント」も売れ、改めてドラッカーが注目されている。
ドラッカーは経営学者であると共に、自らを社会生態学者、と名乗るように社会生態を観察する中で、マネジメントの重要性を発見した。
ドラッカーの著書の中に「ネクスト・ソサエティ」がある。
サブタイトルは「歴史が見たことのない未来がはじまる」とあるように、2002年に発行されたこの本で、これから起こる社会の変化を予見しているが「それがことごとく現実のもになっている」と語るのはドラッカーファンの元業界人である。
では、もしドラに倣って「もしホールの新人スタッフがドラッカーの『ネクスト・ソサエティ』を読んだら」というストーリー仕立てでパチンコ業界の改革を図っていく、というのはどうだろうか。
「ネクスト・ソサエティ」で経済が社会を変える従来のスタイルから、経済が社会を変えるのではなく、社会が経済を変える、と喝破している。
人口動態の変化による雇用形態の変化、それによって日本を支えてきた製造業の没落。
「今後、ますます厳しい競争社会になり、格差社会もこれまで以上に広がります。金持ちと貧乏人の格差が付き過ぎて上下の対立が生まれる、とんでもない社会になる。国によっては暴動が起きます」と元業界人は力説する。
日本人は総中流、といわれたのも死語となっているように、職を失った所得が減った中流層が下流層にどんどん成り下がっている。
元業界人はドラッカーに倣って社会観察をするのを得意としている。
「男性の散髪代は通常3800円ぐらいが相場ですが、個人でやっている散髪屋の廃業が相次いでいる。その客は1800円の大衆理容に流れていたのだが、その大衆理容が危機感を抱いている。さらに安い1000円カットの店へ客が流れているから」
散髪屋一つとってもこのように形態が変わってきている。
サラリーマンが削られる小遣いの自衛策としてワンコインの弁当でひるめし代を節約していたが、弁当も500円から280円の競争になっている。
こういう時代にパチンコ業界は1円パチンコで時代の変化に対応したかに見えたが、1円では儲からない、と釘を締めたのでは客のニーズには応えていない。
ドラッカーは営利だけに主眼を置く企業を認めない。さらに、社会や人類の発展のためにならない金儲けは認めない。
会社の成果は顧客の満足だという。
ドラッカー視点でパチンコ業界を見つめなおしたとき、パチンコの社会的意義が見い出せなければ、パチンコの将来性はない。
つづく
