パチンコ業界では、消費税が10%に上がった際、スロットの貸出枚数を1000円で50枚から46~47枚に変更した経緯がある。パチンコの場合、釘調整で対応可能だが、スロットはゲーム数が明確に設定されているため、貸出枚数を抑える以外に手がなかった。これが利用者からの不満を招いたのは言うまでもない。
では、消費税が15%に引き上げられた場合、どうなるのか。業界識者たちは口を揃えて「等価交換営業では成り立たない」と警鐘を鳴らしている。10%から15%に消費税が引き上げられるということは、今よりも5%多く粗利を取らなければならない。この5%を吸収するためには、出玉を削るしか方法がないが、それは即ち客離れを意味する。パチンコ業界は、消費税の重圧をどのように緩和するか、頭を抱えことが予想される。
公営ギャンブルに目を向けると、控除率が予め決まっているため、消費税の影響は比較的少ない。配当で誤魔化しがきくので、影響は限定的だ。それに対し、貸し玉やメダル料金が収益の柱であるパチンコ業界は、消費税アップへの対応が困難だ。等価交換が前提となる中、価格に上乗せして消費税を吸収しようとすれば、ユーザーが離れてしまう可能性が高い。
消費税の影響を受けるのはパチンコ業界だけではない。ウーバーイーツや出前館などのデリバリーサービスがコロナ禍で大盛況を博したが、コロナが収束し始めると、手数料の35%負担が飲食店に重くのしかかっている。1000円の注文に対して350円も持っていかれるのだから、飲食店にとっては痛い負担である。
同様に、キャッシュレス決済の手数料も3~4%と高く、負担が増すたびに小売業者は頭を悩ませている。例えば、食品スーパーのロピアは、この手数料負担を避けるために現金オンリーの方針を採っている。顧客に還元するための工夫だが、消費税がさらに上がれば、こうした現金主義がさらに広がるかもしれない。
パチンコ業界も、脱等価を目指すために11割~12割営業と段階的に利率を落としていき、最終的には14割営業に移行することが望ましいとされる。しかし、問題はその過程でユーザーが離れずについてくるかどうかだ。
業界はしばしば他店を出し抜く形での営業を展開するため、理想とされる14割営業への道のりは険しいものがある。業界全体が足並みを揃えて同じ方向を目指すことができれば、消費税15%時代にも対応可能かもしれないが、その実現には多くの課題が残されている。
まだ15%の消費税引き上げが確定したわけではないが、業界内では「もしその時が来たらどうする?」という議論を始めて、その時に備えなければいけない。

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