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技術は心に勝てない

技術は申し分ない。彼が釘を叩けば必ず業績が上がる。結果、オーナーから抜群の信頼を勝ち取る事ができた。しかし彼は部下の育成には全く興味を示さず、昼間は競輪、競艇、競馬に、夜は麻雀に明け暮れていた。釘は朝の4時から4店舗の釘を叩き、そうして一日を締めくくるという具合だった。一体いつ寝るのかは定かではない。

今から35年も前の話です。彼は私の上司で、私はその上司に憧れていました。
俗に「釘の神様」と呼ばれていたその部長は口数が少なく、反面釘に関してはシビアでした。
それから数年たち、ダイコクのベース管理なる概念が業界に浸透しようとする頃、私たち店長8人が上野の釘の研修を受けに行くことになりました。

会社ではオーナーが「これからはベース管理、スタート管理を最優先に」と言い放つと、
その理論を部長にも伝え、店長たちに徹底するよう指示を出したのです。
一言で言えば部長は腐りました。
「お前らが釘を叩くことには反対はしないが、ベースだのスタートだの俺には関係ねえ」
と自己流で通すことを明言されたのです。

それから2年後、誰に知られるともなく、ひっそりと部長はこの会社を辞められました。
部長が隆盛を極めていた頃、社長は「もし部長が死んだなら会社は社葬を行う」とまで言わしめたのです。その部長がほとんどクビ状態でやめたという事実は私にとって衝撃でした。

とどのつまり部長の人間性に問題があった、と専務は私たちに告げられました。
環境が変わる。時代が変わる。そこに順応出来ない者は会社に残ることはできない。そういうことなのでしょうか。

「技術は心に勝てない」とはある漫画に挿入されていた借り物の言葉ですが、この言葉はかつての部長を連想させるのです。私は技術に長けていても志が低い、心の根っこが卑しい、または貧しい、心根が腐っていたのではその技術はやがて使い物にならなくなるという風に解釈しました。では正しい心とは何でしょうか。

ものづくりにおいて謙虚であるべきだと思うのです。そしてその技術を惜しまず部下や後輩たちに伝え続けること。この伝えるという行為そのものが人間に課せられた一つの使命のような気がしてなりません。技術は後からついてくるもの。その心の根っこを正すのが上司としての役割ではないでしょうか。


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コメント[ コメント記入欄を表示 ]

  1. 「技術は心に勝てない」この言葉を読むと、戦時中の亡霊に出会った様に寒気を感じる。
    精神力で物量には勝てない。食料がないと戦えない。
    こんな当たり前なことを大勢の餓死者と終戦と共に学んだはずなのに、油断をするとふと亡霊が出てくる事が恐ろしい。

    件の部長氏は心の根っこが卑しいから技術があったのに退職したのではなく、合理化に対応できなかったから退職したのです。

    また、私は日本人の欠点の1つはこの点だと思います。
    勘による釘の調整など、ある特別な状況が不変なものであると勘違いをし、その状況でのみ通用する小手先の技術に特化する。
    やがては、その状況が変われば状況に対応できず滅びる。
    まさに、現代の日本社会がその滅びつつあるのがその例ですね。
    このままアジアの後進国になるのでしょう。
    まだ一応売れる恩がある内に韓国などに恩と媚を売っておくべきでしょう。

    皆さんは李御寧という韓国の評論家が書いた「「縮み」志向の日本人」という本を読んでみたらよろしい。
    扇子というものに始まりチマチマ細かい物を作ることが美徳と思い込む日本人の思考の例が出ていて面白いです。
    匿名人  »このコメントに返信
  2. ピンバック: 匿名人

    • 匿名人さま
      私は思います。人間ですから好き嫌いはあります。しかしその地に芽生えた文化を批判するのは如何なものかと。そして〇〇人と特定の国民を批判するのはよろしくないと思います。
      状況に馴染めず滅びる。それは事実です。それでもその人に罪はないのです。何人であろうと人は自らの営みをより良いものにしようと生きているわけですから、そこにばつ印を付ける権利は誰にもないと思います。
      いつもコメントありがとうございます。
      山田塾  »このコメントに返信
    • ピンバック: 山田塾

      • ご指摘ありがとうございます。
        「私は日本人の欠点の1つはこの点だと思います。」との点、
        不快に感じる方もいる表現なので、
        「私は現代社会の欠点の1つはこの点だと思います。現代社会と言っても私は主に日本社会の事しかわかりませんが。」と、訂正致します。

        しかし、私の言いたいことの本質に訂正はありません。
        ある男が駐輪場で人の自転車を外に出してでも自分のお気に入りの位置に割込むのは、彼が中国人だからだと言うような差別的な言葉を言っているのではありません。

        我々の日本社会なり日本習慣、日本文化に残る過ちを、自覚し改善したいとの思いから、「日本人の欠点」として下記の様に申しました。
        「ある特別な状況が不変なものであると勘違いをし、その状況でのみ通用する小手先の技術に特化する。やがては、その状況が変われば状況に対応できず滅びる。」

        少し前の記事のスーパー長崎屋は、かつて社員個人の職人的目利きで衣類品に力をいれ繁栄しましたが
        世の中のニーズが変われば崩壊しました。

        我々の周囲も釘調整が違法となりつつあり、再び封入式パチンコの話が出て、それに置き換わると、釘に変わる調整方法を探す必要があります。
        匿名人  »このコメントに返信
      • ピンバック: 匿名人

        • 匿名人さま
          丁寧なご説明、ありがとうございます。
          とてもわかりやすかったです。
          環境の変化を予測し、それに対して準備をする。そして変化の訪れを受け止めて営みを続ける。心がけたいものです。
          コメントありがとうございました。
          山田塾  »このコメントに返信
        • ピンバック: 山田塾

    • 販促の変人さま
      お久しぶりです。コメント大いに共感します。部長の采配が会社や現場に大きく影響を及ぼしますね。現場とフロントの繋ぎ役。とても大切な役割だと思います。
      コメントありがとうございました。
      山田塾  »このコメントに返信
    • ピンバック: 山田塾

  3. 山田塾様、久しぶりにコメントいたします。
    この不器用で昔ながらの部長さん、その部長さんの教育は、やはり社長が行うのではないでしょうか?
    社長が重用して要職に就けたのであれば、その責任は社長にあると思います。

    わたしもいくつものパチンコ法人を転々としましたが、部長職が一番難しいと思ってます。
    現在も業者として各ホール法人様にお世話になっていますが、業績を残している法人ではこの部長職に優秀な人が就いています。
    社長に現場の現実を理解してもらう、店長に会社の実情や将来の方向性を理解させる、これ大体が部長職の役目です。
    これが上手くいっているホールは店長がやる気に漲っています。
    逆に部長が拗ねていたり、やる気がなかったら、現場が荒れ放題になっていますね…(^^;

    「技術は心に勝てない」仰るとおりだと思います。
    そして要職に就く人は「人間力」を磨かなければならないとも思います。
    最後は人の情熱・やる気・信頼関係がものを言うと思います。
    人を惹き付ける、人をやる気にさせる、人から信頼される。そういう人材が多くいる法人が企業として最も強いのだと考えます。
    ゆえに大事なのは社長でしょうか?
    社長が社員から信頼される、社長が自分の利益よりも社員の成長を望むような会社に、優秀な社員や役職が育っているような気がします。

    そんな企業様が増えること、切に願ってやみません。

    山田塾様のご活躍とともに、不毛な業界に花を咲かせる人が増えること、期待しています。
    販促の変人  »このコメントに返信
  4. ピンバック: 販促の変人

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