この年のパチンコ業といえば市場規模は23兆円で遊技人口は2800万人。パチンコ産業が右肩上がりの時代で、90年代は東京キー局も盛んにパチンコ業界を取り上げていた。その中で、日テレが最も視聴率が上がる午後9時のゴールデンタイムの情報ドキュメンタリー番組で「パチンコ業界の秘密を教えます」のタイトルで、パチンコ業界を取り上げたことがある。今なら絶対放送できない様な番組内容が堂々と放送されていた。
番組はパチンコのフランチャイズ展開する会社を軸に話が進んでいく。
フランチャイズ本部の直営店が目星をつけたのが、雪国で温泉地と漁港がある村の農地だった。
あえて村に出店したのは二等地戦略だった。駅前の繁華街などは土地代が滅茶苦茶高いが、田舎の農地だと土地代も安い。投資の回収を急ぐ必要もない。娯楽のない場所に娯楽を持って行く、という発想だ。
早速、立地診断を行う。漁港へ行って漁師さんに直接、漁師の人数を聞く。20人ほどと踏んでいたら100人はいる。さらにシケの日は漁へ出られないので、休んでいる。思わず「うれしいな」とほくそ笑む。
出店用地には既存店が3店舗営業している。競合店調査では隠しマイクに店内の状況を吹き込んでいく。挙動不審で店から何をしているのか、と聞かれた場合は市場調査会社の名刺を差し出して「スーパーができるので、市場調査をしている」とうそぶく。名刺の電話番号はFAX番号。相手が電話しても「切り替えができていないようです」と言い逃れる。
情報収集の甘さは確実に失敗するから、と。
市場調査のために泊まった旅館では夕食の時、中居さんに「地元の暴力団はありますか?」とさりげなく聞き込む。
立地診断会議の結果、温泉地の芸者さんや中居さんなどの女性客の他、漁師さんの集客も望める。総投資額は3億8000万円。この中には開店で打つ赤字額から土地の購入費まで含まれている。1日の売り上げ目標額は700万円。
場面は転換してフランチャイズ店としてオープンする店舗にカメラが入る。本部のマニュアルによって機種選定から従業員教育までが行われる。
ここでオーナー側との会話のシーンが流れる。
「1日200万円の放出はいつまで続けるんですか?」
「開店プロが多い時は一旦落としますが、サラリーマン客が多い場合は続けます。それで赤字額を3000万円用意してくださいといいました」
「適正利益が出るのはいつ頃ですか?」
「半年はかかります」
具体的な数字がポンポン飛び出す。
フランチャイズ本部には全国から立地診断の申し込みが寄せられる。カメラはパチンコ業界に参入したい水産加工会社へ。
問題点は倉庫が潰せないので駐車場が台数分確保できないことにあった。銀行の担当と融資話をしているシーンまで流れる。
立地診断の結果は250点満点で全国平均が180点のところ、このケースでは179点で準合格となった。駐車場が100台弱しか確保できないことがネックだった。
フランチャイズの用地として合格するのは1割。
「危ないと思えばはっきり不合格を言うのが使命。失敗は許されないから」
秋田県に居抜き物件が出た。
建物は築8年。管理できずに放置してあったので、玉やコイン泥棒にも入られ廃墟のような店舗だった。
売値は2億5000万円。競合店がない物件なので一目で気にいる。2億2000万円で交渉すると意気込む。
ところが、直前に手付を打ったライバルが出る。
「2億6000万円で買うから、手を引いてもらえないか」と仲介業者に自動車電話で交渉する。
「B勘もあってどうにもならない。勘弁して欲しい」
交渉は不成立に終わる。
深夜のフランチャイズ本部には加盟店からその日の営業報告がFAXで毎日届く。それを分析した本部が釘調整の指示を出し、それに基づいて釘師が釘調整して行くシーンも流れる。
直営店の開店準備ができたところで、所轄の防犯少年課の担当が立ち入り検査に入る。申請通りの機械が設置されているか、1分間に100発以内かの発射テストなどを行う。
いよいよ直営店が開店日を迎える。心配していた暴力団の3人組が車で乗り付けてくるが、テレビカメラが入っていたので、退散していく。
「もしもの場合はすぐに110番に電話するように」と店長に指示を飛ばす。
初日の売り上げは目標の700万円に対して900万円だった。
以上が主な番組内容だが、31年後の今、テレビカメラがここまで踏み込んで番組を作れることは到底考えられない時代になってしまった。
平成のはじめは、まだまだパチンコ業界に寛容で牧歌的時代だったことが分かる。
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