マルハンを通じて、業界のありかたについても言及しております。私見、提案、回顧、事例などが混在しており、読みづらいかと思いますが、ご容赦下さい。
1.売上・粗利・IR資料
前回触れた利益率とは粗利益(売上総利益)率を指しています。IR資料とは昨年6月に公開された「2012年3月期マルハン会社説明資料」を指します。
粗利なので粗利から機械代や人件費などの諸経費を差引いた営業利益とは別です。パチンコ業の粗利は業の性質から他業種での売上と見るのが一般的です。
しかし、自分たちを大きく見せたい時には売上規模で語り、儲けすぎだと批判されると粗利規模で語る。
産業規模を語る際に、そのように売上と粗利を都合で使い分けるコンサルタントや業界人は多いです。
マルハンが使い分けている事例は確認していませんが、売上1兆円達成時の横断幕には同業者としては、やっかみではなく、「大きく見せすぎでは」と感じたのが正直な気持ちです。
兆という単位で社員を鼓舞しようとしたのか? あるいは法人を分散させ身軽でいることよりも王道を選び進んだ結果をアピールしたかったのか?
真意はわかりません。
殆どの方が認識されていると思いますが、パチンコ売上は貸玉料です。
例えば等価営業で千円貸玉を遊ばずに交換・換金。それを10億回くりかえせば、弱小店でも千円が行ったり来たりで1兆になります。気の遠くなる10億回、誰もそういうことは、しませんが、理論的には可能です。パチンコの売上とはそういうものです。
自らアピールしなくてもその売上から推察される企業努力は伝わる人には伝わります。
また、伝わらない人には言い方を代えても伝わらないし、表面的にしか理解しない人と同じで、決してマルハンはじめ、業界の理解者にはならないし、揶揄されるだけかと思います。
よって私はパチンコ店の売上はさりげなく、事務的に触れる程度でよいかと思っています。
次に粗利についての体験を述べます。業界人には釈迦に説法のような話が続きますがしばし、お付き合い下さい。
「アウト(稼働)は?いくら抜けているのか(粗利を確保しているのか)?」といった確認、その類の会話はあいさつと同じくらいしていますし、してきました。
お客様への断りもなく、また、開示もせずに店の都合だけで、日毎、粗利益を調整しようとする。
これはパチンコ業の妙ですが、一方、お客様の立場からはどうなのか、そういう事を考えながらも…抜いています。
抜き幅はその時々で異なり、赤字の日もあります。しかし、ビジネスですからトータルでは…当たり前に抜きましたし、抜いてます。
しかし、集客が予測以下であったり、確率が甘く出たりすると、月間粗利未達成となります。稼働よりも粗利重視の場合、月間の粗利未達を避けるため月の終盤に駆け込みで抜く事があります。
この駆け込み行為の積み重ねがお客様の不信に繋がると感じています。
そう言った事態にならないためには稼働予測と稼働を構成する客数・客層・客質分析が重要であり、その精度が高いほど駆け込みなく、低稼働でもバランスよく粗利を確保できると思います。
もちろん低稼働の限度はあり、その基準は地域・環境によって異なります。
店長である以上は常にステークホルダーを意識し、不測の事態が起こることも踏まえ、最低でも半年くらいのシナリオは、描いておきたいものです。また、技術力は大切ですが予測力がもっと大切かと、予測通り進んで初めて技術が生きるかとそう感じています。
また粗利よりも長期的な営業利益が重要かと思っており、経費バランスには日々気を配り、取組んでいます。
ところで、前述の「抜く」という言葉は業界独特の表現で世間では通用しない言葉です。しかし、使っています。誰がはじめに使ったかはわかりません。言い得て妙ですが、「抜く」とは「とりのぞく・追い越す・盗む」などの意味です。
過去のコメントでも多く見られましたが、「粗利を確保する」を「抜く」と表現する業界の体質があります。
マルハンをはじめ、「お客様が大切」とアピールする有力店も日常的に「抜く」という言葉を使っているかと思います。私も使うのですが。
次にIRについてです。
マルハンはじめ、大手数社は決算期ごとのIRを行い、一部はHP上に公開しています。私はIRについてはこうして参考にし、自店と比較、勉強になるので好意を持っています。
IRは投資家向けの広報活動全般ですから主に投資家(資産家)や金融機関を意識したものです。
そこで私見ですが、もう一方の投資家(お客様)を意識したものにシフトしないと勿体無いと思います。
具体的には店ごと、日毎、還元率(利益率)を公表する。店舗ブログやカウンター横に掲示。SIS平均と比較しても良いでしょう。事前に予告すると、広告規制にかかりそうですが、日毎の結果だと事実の公開になり支障はないはずです。
また、出玉(大当回数)情報と併用し、お客様のより冷静な店選びに繋がるかと思います。
そして、自信のある店舗にとっては煽りではない、絶好の広告宣伝かと思います。
IR資料から粗利益率は業界平均より低い。マルハンならそれが可能かと、決算期IRを日毎IRに、会社IRを店舗IRにする。
マルハンが良く使う「業界を変える」「新しいパチンコ」とは本来はそういうところにあるのではないのでしょうか。
表だった換金は公営に倣うことはできませんが、還元率(利益率)公開は倣えます。また、店舗還元率(利益率)の日毎公開は会社上層部が決断すればすぐにでも出来ることと思います。
管理コンピュータが行き届くパチンコ店こそ、そういう取組みが可能です(経費は日毎確定できないのでここで言う日毎IRは還元率・粗利益率を指します)。
一方、IRは行わないが、現場でしっかりとお客様に出玉を体感させ、ハートをつかむ。そういう店舗もおおいに結構かと思いますし、そういう路線の有力店・有力法人も多いかと思います。
私自身は店舗還元率の公開を実現する野心を持つものの、実現はしておりません(汗)。
よって、「このことが業界の透明性・健全性に繋がるのでは」と言った、そういう希望であるとご理解くださいませ。
お客様の離反・お客様の安心、両方の可能性があると思います。年間・全社IRを行うのであれば、日毎・店舗でも不可能では無いはずです。すでに実行している店があるかどうかわかりません。
15~6年前、40個交換主流の時代に還元率(利益率)ではなく、島ごとにアウト・差玉を公開していた店が記憶にあります。
不確かな記憶で恐縮ですが、確か明石のマルハンだったような。今は機器の充実で全台の差玉を見ることはできますが、定時にジャーナル印字を島端に貼っていたことは当時新鮮に感じ、記憶の片隅に残っております(単にデータロボがスランプグラフ対応でなかっただけかも知れませんが)。
健全性や透明性を出来るところから追求することで、業界の地力と言いますか、実像を自覚できるかと思います。また、そういう時期に来ていると感じています。
2.地域一番店
マルハンの資料では独自の手法による2回統計店舗比較から直近の地域一番店比率を91.5%としています。稼働率地域一番店の定義づけと判定を第三者が行い、業界の共通認識にならない限り、この数字は正確ではないと言えます。
よって、自己満足の指標かと思います。
例えば、SISのアウトデータを競合店も同意の下で開示しあい、比較するなら納得できます。一、二番店が僅差の場合の判定はどうしているのか? 商圏はどう定めているのか?
一番店舗名も開示しておらず、疑問がわきます。
マルハンと対峙する各地の有力店の「ほんとうかよ」と言う声が聞こえてきそうです。
他者が言うならともかく、自分で宣言するのはいかがかと、感じますし、一番、番と言う相対評価は客観的であるべきです。
その真意はどこにあるのか? 前述の通りの仮説ですが「新卒者むけ?銀行?プレス?社員を鼓舞するため?
などあれこれ考えてしまいます。ただし、デジタルに不慣れなおじさん客、おばさん客を意識したものとは到底、思えません。
そして、すべてのお客様が相対評価での一番店を意識している訳ではありません。
経験則ですが、繁盛店のライバルはその店の以前の姿でもあります。例え稼働率一番を維持していても稼働が落ちる時期があります。出しても出しても「出てない。」抜いても抜いても「出てる。」と同じ店舗で言われたことがあります。
「以前は出していたからお客が多かった」とお客様は判断されたのです。「実は客足が落ちた今の方が出しているよ」と言いたいのですが、言えません。判断するのはお客様ですから。
私は10年前の520台(4円・20円のみ)年間P5万S2万稼働越え店舗から、800台(レート多様)年間平均稼働20%まで複数法人の様々な店舗を運よく、経験させていただきました。平均では6年在籍しましたが、入退社を繰り返しました(トホホ)。
でも、そのおかげで結果的に多くの経験をさせていただきました。
因みに職位は平社員から部長まで、部長職で退社。部長職後の主任職は辛いものがありましたが、今となればいい思い出です。拾って頂いた会社にも感謝です。
様々な職位を経験しましたが店長職が一番面白い。今は店長職の面白さを感じながら日々過ごしています。ただし、転職を繰り返すことはお勧めしません。茨の道を歩む覚悟があれば別ですが、念のために言っておきます。
経験の話を続けて恐縮です。5万稼働の店よりも20%稼働の店のほうが年間の台あたりの営業利益は実は多かったりもします。
年間もしくは数年間ですから、決して短期ではありません。そういう店はオペレーションの工夫もありますし、やるべきことはキチンしています。
常連さまのためにTV取材に応じない目立たないラーメン店と同じく、借りすぎず、入替過ぎず、薄利でわざと目立たない、そんな店でした。
また、稼働率30%代の店舗在籍時には偶然?もしくは競合店のエラー?によって稼働が伸びた事がありました。
その際「最近、出してるね。」と常連のお客様から声をかけられました。出玉感(景品玉)で判断されたのでしょう。
稼働アップ時は利益率がそのままでも出玉感(景品玉)はアップします。よって、安定稼働・安定利益であれば、地域一番店に拘る必要はなく、内なる一番、お客様にとっての一番店を意識すればよいと思います。
稼働は血圧や飛行機の高度と同じで高すぎても低すぎても辛いです。乱高下はできるだけ避けたいものです。
乱高下しないためにも計数に加え、常に客層、客質は見ておきたいです。
客層・客質に関係しますが、プロ、セミプロの中でも、ジグマとノリ打ちは異なると感じています。ジグマは目立たないし、定時に帰ります。
次のお客様のためにさりげなくハンカチでハンドルを拭いて帰ったり、マナーも良く、他のお客様に優しいことが多くありました。
某マルハンではノリ打ちや潜伏狙い客が多いと耳にしますが、彼らはガセ煽りには騙されませんので、それはそれで人気の証でしょうが、そんなお客が増えすぎた地域一番店は決してマルハンが本来、望んだ形ではないはずです。
3.ラッピングトラック・中つり全車両広告
大阪でのその光景を同業者でありながら「危機感」というよりもまずは「奇異」に感じました。
私は当局規制や自主規制が強い地域での勤務経験が長く、2011・6・22通達以前のおおらかな大阪の広告宣伝には本当にびっくりしました。大阪の業界の先輩方が当局と様々なシーンで防犯協力など信頼関係を構築したことがその背景にあるかと想像できますし、信頼関係の構築は良いことかと思います。
しかし、「マルハンがするなら」と、「規制にはかからないから」と、大阪の有力店であるn社やh社が競ってラッピングトラックを走らせると御堂筋はどうなるのでしょうか?
大阪市民でパチンコをされない方はどう思われるのでしょうか?
イチョウの葉がパチンコ玉やメダルになってしまうのでしょうか?
当局から指摘されるまでやり続けるのでしょうか?
世論を人一倍意識し、自制する気はないのでしょうか?
憎まれても良いから目立った者が勝ちとでも思っているのでしょうか?
と様々な疑問がわきました。
また、S県やG県ではそれまで守っていた、自主規制を反故にし、空チラシ(イメージチラシ)を多く入れるなど驕りともとれる良からぬ話も耳に入りました。
このことでマルハンが世間から問題にされるのは自業自得でしょうが、憎まれる時はお子様の事故と同じく、業界全体が憎まれます。そういう意味では奇異よりも危機感という表現が相応しいかと思います。
御堂筋線のラッピング地下鉄に関してもマルハンを全面に押し出すのではなく大阪城や通天閣など観光名所を写真やイラストで全面に出し、隅っこにマルハンロゴであっても「実はマルハンなんや」と気づいていただける。
意外とそちらの方がマルハンのブランドイメージは訴求できるかとも思います。
余計なお節介でしょうが、控えめがイメージアップに繋がることもあるかと。広告宣伝において直球ばかりではなくチェンジアップも必要かとそう思います。
4.BA・TY・S、その他クォリティー
前回はいずれも10年前、当該店で1年間にわたり、複数日、試打、視察した上での判断です。
最近はあるマルハン2店舗で不定期に遊びますが、同じ機種でも店舗により異なります。
きつくBA、TY、Sを落としているケースも見受けられます。もちろん機種によって日によって様々です。
当たり前なんですが。
調査・研究のためには複数店舗の土日を含む数日のサンプルが必要です。また、私に同じく、駆け込み抜きもあろうかと思います。パチンコと異なり、スロットは設定が上手く、客つきも良好な印象です。
印象ばかりで申し訳ありません。
よって接客やクリーンリネスはマルハン標準クオリティーは伝わるものの、釘調整のクォリティーはなんとも評価できません。
接客に関しては「おもてなしします」と言ったアピールを感じるものの、同業他社に比べ、決して表面だけで終始しない内面的なものはいつも感じています。
約300店 1万人をそういうレベルに押し上げたのは並大抵のことではないとそう感じています。
5.結び
私は内からも外からも長年パチンコと付き合ってきました。手打ちの時代から 内・外を通算すると30数年になります。
大きな声では言えませんが手打ちデビューは○○歳です。幼い頃、近所の繁華街にパチンコ店が多く、くわえタバコで両手を使い、立ち打ちする大人たちをガラス越しに見て、あこがれたりもしました。
経験が長いことを自慢したいわけでも、ノスタルジーに浸りたいわけでもありません。
30年前、20年前、10年前と節目ごとに振り返ると大きく変わってきたことの実感を伝えたいのです。
変わり方が正しかったのかどうか、それはまだ、判断できません。
胡散臭い部分も、欲望渦巻く部分も、ワクワクドキドキ感も、グレーな部分も、人間の持つ表も裏もコンプレックスの反動も、遊技台のしくみも進化も、待ち合わせに時間があるからちょっと打とうかという感覚もすべてが好きで好きでなんとか続けることができましたし、これからもついていけるなら走り続ける気でいます。
21年前、業界に転職の際、身内から「パチンコ業なんかに・・気が狂った」とも言われました。「なんかではない。パチンコは明るくなりつつあるし、社会貢献もしているし、、○兆円規模で、雇用も創出しているし」などとはこれっぽっちも抗弁しませんでした(当時はそう言う明るいと思われる情報も無かったです)。
「好きにさせてくれ。ただし、生活面は迷惑かけない」と主張したのです。
もちろん高額そうなギャラにもあこがれはありました。
回顧することで パンチパーマーの従業員を容認するのではありません。かといって過度な接客アピールも如何なものかと思います。つまりは清潔で控えめで良いかと。
広告宣伝も同じく控えめで良いかと思います。派手な宣伝を繰り返さないと目標売上が維持できないような業は如何なものかと、そもそもの目標が背伸びし過ぎた物であると冷静に総括すべきではないのでしょうか。
こんな私ですから(世間では変わり者とおもわれると思いますが)パチンコ業はお客様も従業員も参加者全てに楽しさの強調だけではなく、そういうパチンコであることを併せ呑む覚悟を持つ必要があると考えています。
ところがこの10年で、覚悟の無いお客様や従業員を多く、巻き込んでしまっているような気がします。
いや、巻き込んでいるのです。
「是非どうぞ」ではなく「よく考えて、よろしければどうぞ」の世界にもかかわらず。
私の考えはパチンコ業のイメージアップを図ろうとするマルハンの対極なのかも知れません。
実はマルハンもHPで見られるとおり、飲食・マカオ・カンボジアなど様々な形で、ある意味のリスクヘッジをかけているかとそう見ています。
一連のシリーズで、良い思い出や辛辣な意見も長々と書かせていただきました。
パチンコ日報を読まれるマルハン関係者の方々へは失礼な表記も言葉足らずも多くあったことかと思います。
お詫び申し上げます。
業界やマルハンに関し、経験したこと、言いたいことはまだまだあります。管理人様や読者のみな様のご許可があれば、不定期ですがまた、寄稿させてください。
最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました。

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