事の発端は、あるコメ農家の主が長年愛用してきたトラクターやコンバイン、田植え機、乾燥機などが老朽化で、もう限界を迎えていた。が。お金がない! 一式を入れ替えるとなると億単位の見積もりになった。ところが農家の主は高齢者で、金融機関に融資を頼んでも、年齢なこともあり借りることは難しかった。
そんな窮地に立たされた農家の主に、救世主が現れる。それがホール企業のオーナーだった。
実はこのホールオーナー、農家の主とは昔からの友人だった。 幼少期を一緒に過ごした二人は「腐れ縁」だった。 農家の主が困っていることを知っていたオーナーは、手を差し伸べることにした。
「よし、これからは農業だ!」
この決断は、単純に友情だけではない。オーナー自身、10年以上前から「異業種参入」の道を進めていたからだ。
東北地区でのホール経営は、人口減少とともに厳しさを増している。オーナーは「ホールだけじゃやっていけない。何か別の柱が必要だ」と感じ、異業種に参入した。
最初に挑戦したのは「ミスタードーナツ」のフランチャイズ。 都市で成功しているから地方でも儲かるだろう、なんて甘い考えだった。これが見事に大失敗。 地方は人口が少ないうえ、外食文化も違う。それで収益が伸びず、赤字が続いた。
それ以外のフランチャイズにも挑戦したがことごとく失敗。「フランチャイズだけは二度とやらない」と心に誓う一方で、コンビニは4店舗を運営している。
異業種参入で数々の失敗を乗り越え、最後に目を向けたのが「農業」だった。きっかけは、マルハンが農業へ進出したニュースに刺激を受けていた。
さらに、今年起きた「コメ不足」問題が農業参入を後押しした。人口減少や国民のコメ離れが続く中、コメ農家は後継者不足に悩まされている。離農するケースが増えていることをチャンスと捉え、今度こそ成功させるという強い意志を持って、2億5000万円もの巨額をコメ農家に投資したのだ。
今回の投資の先は山形県のコメ農家だが、オーナーは北海道進出を目指している。コメの一大産地である新潟県が毎年のように続く猛暑で一等米の収穫が減少している。そのため、今後は気候が安定している北海道が日本最大のコメ生産地になると読んでいるからだ。
そして、オーナーの息子である常務も、一からコメ作りを学ぶために、田んぼで汗を流している。地方のホール業界が厳しい中、果敢に農業に挑戦するこのオーナーの姿は、他の企業にも刺激になることだろう。

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