「この頃のオーナーは営業のことにはほとんど関心がない。9割以上のオーナーは異業種のことや売却話にしか関心がない」と業界コンサルが言うのを聞くと、「ああ、やっぱり」と思ってしまう。
やはり、オーナーたちのホール経営に対する熱量が冷めきっている。
昔はオーナーたちも、ホールの運営に心血を注ぎ、顧客を喜ばせるために日々工夫を凝らしていた。しかし、今ではできることならホールを手放して、そのお金を元手に別のビジネスに乗り換えたいという雰囲気が漂っている。
そんな中、都内のあるホールが何を思ったか、弁当屋を買収したというニュースが飛び込んできた。このホール、昔からその弁当屋の弁当を本社に20~30個ほど配達してもらっていたようだ。社内では「いつもの500円弁当」と呼ばれ、社員たちはその弁当を会社負担で食べていた。
では、なぜこのホールが弁当屋を買収することになったのか? その理由は二つある。一つ目は、弁当屋に後継者がいなかったということ。二つ目は、ホールの社長が「これからの時代、ホール一本では厳しい」と感じたためだ。
もしホールを畳むことになっても、弁当屋を続ければ社員たちの雇用は確保できると考えたようだ。確かに、ホール業界はこの先どうなるか分からない。社長の判断は一理ある。
で、買収してすぐに行ったのが弁当箱の変更だった。丁度切り替えるタイミングだったのだが、これまで使っていた弁当箱よりも一回り小さいサイズを採用した。
社長は「少し中身を減らしてコストを抑えよう」と考えたのだろう。しかし、弁当の量が減ることで社員たちから不満が出るのでは?と心配になったのか、社長は別の施策も打ち出した。なんと、社員向けの弁当には2品多くおかずをつけ、グレードをアップさせたのだ。「これなら不満も出ないだろう」と思ったに違いない。
そして、ここからが面白いところ。社長は弁当屋を拡大しようと販路を広げる計画を立てた。しかも、ただ拡大するだけではない。配達員たちに新規の注文を取ってくるたび、1個につき50円の歩合を半年間つけるという制度を導入したのだ。これを聞いた配達員たちは大喜びだ。「50円って、弁当一個で?」と鼻息を荒くし、チラシを持って会社へ飛び込み営業をかけ始めた。
歩合制のおかげで、配達員たちのやる気は満々。自分の努力がそのまま給料に跳ね返ってくるとあれば、頑張らないわけがない。その結果、弁当屋の売り上げは少しずつ伸びていった。
かつてホール経営をどんぶり勘定でやっていた社長も、弁当屋の細かい管理に目覚めたらしく、「数字って面白いな」と思うようになったらしい。まさか弁当屋の買収が、ホール経営者に経営の楽しさを再発見させるとは、誰が予想しただろうか。
こうしてホール業界のオーナーたちは、新たなビジネスチャンスを見つけ、そこに情熱を注ぎ込む人もいる。もちろん、ホール自体の経営も続けているが、もはやオーナーたちの関心は他の業種に向かっている。
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