不審に思った社員は、すぐに他の同僚や上司に確認を取ったが、誰一人としてこのカップ麺の注文をした覚えがないという。箱には送り状や納品書も一切貼られておらず、宅配業者が運んだ形跡も見当たらなかった。
状況を把握するため、防犯カメラの映像を確認することになった。映像には、早朝4時頃、人物らしき影が映り込んでおり、その人物がカップ麺のケースを運び込んでいる様子がうっすらと確認できた。しかし、防犯カメラの角度や光量の関係で顔や服装などの特徴は判別できず、誰が置いていったのかは特定できなかった。
10ケースという量からして、個人が持ち運ぶには明らかに手間がかかる。台車でも使ったのだろうか。それにしても、この量を誰にも見られずにホール前まで運び、短時間で立ち去ったというのは尋常ではない。オーナーに報告したところ、「警察に拾得物として届け出た方が良い」との判断が下された。やがて警察官が到着し、10ケースのカップ麺は拾得物として引き取られることになった。
警察の説明によれば、拾得物は一定期間、すなわち3カ月間持ち主が現れなければ、届け出を行った側に所有権が移るという。つまり、3カ月後にはこの大量の赤いきつねと緑のたぬきがホールの所有物となるわけである。しかし、それが喜ばしいことかといえば話は別である。
もし現金であればありがたく頂くところだが、今回は口に入れる食品である。衛生面や意図が不明な以上、むやみに従業員に配るわけにもいかず、かといって廃棄するには量が多すぎる。
もしこの荷物に一言でも「いつもお世話になっております。従業員の皆様で召し上がってください」といった手紙の一枚でも添えられていれば、常連客の厚意と受け取ることもできただろう。だが実際には一片のメッセージもなく、ただ無言で置かれていただけである。その無機質さが逆に不気味さを増幅させた。
事件性があるわけでもなく、被害が発生しているわけでもない。しかし、誰が何の目的でこんなことをしたのか、謎は深まるばかりだ。常連客にそれとなく聞いても、誰も事情を知る者はいないようで、従業員の間でも話題になっている。冗談交じりに「妖怪・きつねたぬきの仕業じゃないか」と言う者もいれば、「裏で何かのメッセージなのでは」と真剣に悩む者もいる。
奇妙な出来事はそれだけで人をざわつかせる。このカップ麺事件も、その後しばらくホール内で語り草となった。結果的に所有権がホールに移ったとしても、果たしてそれを誰がどう扱うのか、今もなお結論は出ていない。
意図不明、出所不明の食品がホールの前に置かれていたというだけの出来事。しかし、その裏には何らかの思惑があったのか、あるいはただの気まぐれなのか。真相は藪の中である。謎の赤いきつねと緑のたぬきは、今もなおホール関係者の心に小さなモヤを残している。
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だって差出人もない食品なんて、このご時世だれも口になんてしないのあたり前。
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