各社が自社の「顔」となるキャラクターを立ち上げ、業界を挙げて盛り上がった象徴が「Pキャラグランプリ」だ。2022年には73ものホール企業が応募し、盛り上がった。しかし、それ以降この企画は開催されておらず、マスコットキャラクターブームは一段落したかに見えた。
ところが最近、あるホール企業で再びマスコットキャラクターの社内公募が行われたという。条件はなかなか太っ腹で、採用されたキャラクターの作者には賞金50万円を進呈するというものだった。社内でクリエイティブ人材を発掘し、次の一手を探ろうという意味合いもあった。
この企画の背景にあったのが、社長の「くまモン」への強い憧れだった。言わずと知れた、ゆるキャラブームを牽引した立役者であり、今なお全国区の知名度を誇る存在だ。社長は、くまモンのように他企業とタイアップし、グッズ展開を行い、キャラクターの版権使用料を新たな収益源にできるのではないかと考えたのである。
そこで社内に向けて、「もし採用キャラクターに版権使用の話が来た場合は、その収益の10%を作者に還元する」と発破をかけた。やる気を刺激するように思われたが、結果は芳しくなかった。応募作品は集まらず、「これは」というキャラクターも現れないまま、コンテスト自体が頓挫してしまったという。
この失敗の根本には、社長の大きな勘違いがある。くまモンは、キャラクタービジネスで莫大な版権収入を生み出している存在だと思われがちだが、実態はまったく異なる。
くまモンのキャラクター使用料は原則無料であり、熊本県の許可を得れば、企業や団体が商品、名刺、Webサイトなどに無償で使用できる仕組みになっている。
ただし条件がある。それは、熊本県のPRや産業振興といった目的に沿う使い方であること。特定の企業や商品だけを露骨に応援するような利用は認められていない。つまり、くまモンは「稼ぐためのキャラクター」ではなく、「熊本県全体の価値を高めるための公共財」に近い存在なのだ。
この前提を理解せず、「キャラクター=版権ビジネス」という発想だけで企画を立てても、うまくいくはずがない。社内から見ても、ビジョンが曖昧で、夢は語られても現実的な活用像が見えなければ、アイデアも生まれない。
マスコットキャラクターは魔法の杖ではない。成功例の表面だけを見るのではなく、その成り立ちや思想まで理解した上で設計しなければ、次の「くまモン」は生まれない。今回の一件は、キャラクター戦略の難しさと同時に、安易な成功幻想への警鐘とも言えよう。
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