しかし、これは店長などの管理職の給与ではない。一般社員でも、月6日休みで1日あたり約2.5時間の残業をこなせば到達する金額だという。ちなみに、残業なしで月8日休みの働き方なら、給与は24万円程度になる。それでも飲食業界としては決して低い水準ではない。
このポスターを見て、ある人物のキャリアを思い出した。Aさんは新卒でホール企業に就職した。初任給は28万円。当時としては他法人より高く、その待遇が決め手となって入社を決めたという。
しかし、現実は思い描いていたものとは違った。Aさんは約4年間勤務したが、最初の昇進ラインである主任にさえなれなかった。将来性に不安を感じ、自分の能力にも見切りをつけて退職した。
転職先は、タコ焼きの全国チェーンだった。最初はアルバイト感覚で始めた仕事だったが、やがてタコ焼き作りそのものの奥深さを感じるようになった。3年も経つと、店の誰よりも素早く、そして美しくタコ焼きを焼き上げられるようになっていた。本人にも確かな自信が芽生えていた。
振り返ってみると、ホール企業で身についたのは接客程度だった。キャリアと言えるような専門性やスキルはほとんど身につくこともなかった。それに対して、タコ焼き作りは違う。技術を磨けば磨くほど腕が上がり、成果が目に見えて表れる。手に職を付けたことで、ホール勤務時代には味わえなかった達成感を感じるようになった。
そんなある日、Aさんの両親が働く姿を見に店を訪れた。プレートの前で軽やかに手を動かし、次々とタコ焼きを仕上げていく息子の姿は、まさに職人技そのものだった。その様子に感激した父親は「資金は出すから独立しろ」と背中を押した。
その後、Aさんは独立。現在では首都圏で2店舗のタコ焼き店を経営している。年収は1250万円に達した。さらに縁あってテキヤの親分と知り合い、屋台の焼きそばの利権を引き継ぐことになった。これが軌道に乗れば、年収は2000万円に届く勢いだという。
かつてパチンコ業界は「高給取りの世界」と言われた。億単位の資金が動くダイナミックな業界であり、他業種よりも高い給与が人材を惹きつける大きな魅力だった。
しかし今、その優位性は確実に薄れつつある。飲食業界のラーメン店やタコ焼き店でさえ、努力次第で同等、あるいはそれ以上の収入を得ることができる時代になった。
かつて人材確保の武器だった「給料の高さ」というアドバンテージが、また一つ消えようとしている。パチンコ業界が直面しているのは、客離れだけではない。働き手の心も、静かに別の業界へと流れ始めている。
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