データは少し古いが、「就職白書2020」によれば、中途採用……2018年:83万円 → 2019年:103.3万円と1年間で20万円も上がっている。
これだけのコストをかけて採用しても、すぐに辞められたら元も子もない。
飲食店や小売店など50店舗余り経営している会社が、当たり人材を採用するために、特別班を組織した。といってもメンバーはわずか2名。その活動ぶりが認められて、特別班から同社の子会社で人材派遣会社へと昇格した。
その当たり人材を採用する手法が、実にアナログチックだ。いわば一本釣りだった。
メンバー2名の仕事は、飲食業やサービス業などの現場で接客の第一線で働いている人に目星をつけるところから始める。
飲食店なら客として入店して、接客ぶりを観察する。サービス業ではパチンコ店のスタッフも対象となる。
そうやって観察して「動き」「笑顔」が普通以上の人には声を掛け、名刺を渡して事情を説明する。「あなたの素晴らしい働きぶりをみました。ウチの会社で働きませんか?」とまさに一本釣りだ。
それだけでは「はいそうですか」とはならない。まず、移籍料として10万円支払う。時給は現在もらっている金額よりも200~500円上げる。1年間働いてくれたらその時点でまた10万円支払う。2年目の契約が終了した時点で20万円支払う、という条件だ。
一般応募で当たり外れが多いことを考慮して、これを採用コストと考えれば安いというわけだ。
求人会社のアドバイスで履歴書なしのアルバイト採用をやったことがある。やはり、履歴書も不要となるとそれなりの人材しか集まらないことも経験している。
一本釣りはちょっと言い方がきついので、スカウトと言い直そう。
自分の目で見てスカウトしているので、ハズレがないし、面接の手間も不要になる。
さしずめ人海戦術的“ビズリーチ”というところだ。
もちろん、簡単にスカウトができるものではないが、スカウトを経て入社した人は、親会社の飲食店や小売店に配属される。
スカウト手法が効力を発揮するのは、やはり店長になるスピードと確率が格段に違うということだ。スカウトするホールスタッフは元々接客を叩きこまれているので、レベルが高いという。ホールとしては優秀な人材が引き抜かれないようにしなければならないが、その対策はない。

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