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やれることをやる

つい先日のことでした。とあるホールの社長さんから「店長が突然辞めてしまい、後任の主任に釘を教えて欲しい」というご連絡がありました。これは以前からもままあるケースなのですが、お店にとっては一大事です。釘は一朝一夕には成り立ちません。

自己研鑽と工夫、失敗と成功を繰り返しながら身につくものです。しかもほとんどの方々が釘のメカニズムを知らないで業務にあたるのですから、その苦労は火を見るより明らかでしょう。

私はいつでも社員の育成について考えています。ただそれが大切であることは理解しているものの優先順位が後手に回ってしまう。そのようなお話を電話口で聞きました。

ある程度のことを手取り足取り教えることは可能です。しかし「わかる」と「できる」とでは大きな違いがあります。例えば新台を導入する際、メーカーさんからホールさんに送られてくる取扱説明書があります。ここには全ての釘の上下角度が記載されています。そしてそれを実際に測定してみますと微細なずれがあるのです。

ベニヤ時代に比べればその精度は格段に高まっているものの、それでもバラツキがあるのです。そのバラツキがスタートの数値やスランプに影響を及ぼすわけですから当然のように諸元表通りに戻さなければなりません。問題はそれを知らない。知っていてもどうしていいものかがよくわからない。という点にあります。

加えて最近の機械は釘の本数がとても少ないです。その理由で打たれている釘を諸元表通りにしておかないと必ずスランプを呼び起こします。逆を言えば少ない釘をきちんと管理していれば安定した状態でお客さんにお披露目することができるのです。

当たり前のことを私は淡々と電話口で申し伝えました。おそらくその社長さんにとってとても退屈な話だったと思います。それを示すかのように「私は釘のことは何も知らないから、そんなことよりうちの主任をできるだけ早く一人前にしてください」という言葉が返ってきました。私にとってこれは想定内の反応です。何故なら店長が辞めてその代わりの人材がいないという状況が全てを物語っていますから。

実はそのような問題を抱えていらっしゃる企業さんは少なくありません。こういうことを書くとまた「それだからダメなんだ!」という向きの言葉が出てくると思いますが、私は私を必要としていただけるなら最善を尽くして協力をさせていただきます。ただそれだけです。

オーナーの思想は私にあまり関係ありません。それを知ったところで何の問題解決にもならないからです。やれることをやる。これから会う主任さんの成長に対して自分はどこまで協力できるのか。今はそれしかありません。


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