パチンコ日報

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釘は己なり

山田塾の授業は八割が釘漬けの毎日です。残りの二割は私が人生を逃げ回っていた話をしながら説教めいた時間に当てます。塾生達にとっては退屈な時間です。全く人の言葉というものはある意味説得力がありません。

しかし言葉は嘘をつきますが技術は嘘をつきません。自分の心がヒヨっていたり、ものづくりの細かな過程を誤魔化したり、要領をかましたりすれば釘はそれを如実に伝えます。これはホールの調整においても言えることです。

研修中、玉ゲージの扱い方を教えます。最初にゲージ棒の握り方やちょうど良い塩梅のタッチとはこれくらいだとほぼ大まかに教えるだけです。

一時間ほど自主練させたのち、ゲームを行います。盤面に6箇所ある命釘を同じタッチで作りなさい。11.08が掛かり11.07が掛からない100分の1ミリの精度を要求します。制限時間は正味20分。それで何個作れるのかを競い合いなさい。そう命じてできた命釘のタッチを私が確認して回るのです。未経験者は20分で3個から7〜8個くらいでしょうか。

ある程度現場で釘を叩いている者で腕に自信のあるものは50個とか60個とか作る者もいます。そのゲームを4回実施します。すると誰もが驚くほどの成長を見せるのです。やらせておいて言うのもなんですが、私は毎回人間の能力ってすごいなと感心するのです。

因みに8000名を超える塾生の中で最高記録は200個を超えています。つまり1台に6箇所の命釘がある台をこの者は20分で33台以上仕上げられるスキルを持っているという事です。彼が最初に作った個数は60個でした。僅か2時間程度の間にこれほど成長するのです。

これは間違いなく彼らの努力の賜物です。私はそのステージを提供しただけに過ぎません。

小さな成長が自身の嬉しさに変わり、そこから興味を抱くこともあります。年長者が小言や説教を幾つ並べても彼ら自身の経験に勝るものはありません。釘はありがたいものです。

己の心のあり方や佇まいがそのまま出るのです。彼らが不安いっぱいで叩いた釘は見るも無残なものです。しかし彼らの心が躍動し始めた釘はその精度において満点はやれないものの粋の良い釘となってその様子を伝えてくれます。

ものづくりの根底にあるもの。それはつくり手の心模様。まさに釘は己なりなのです。



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コメント[ コメント記入欄を表示 ]

  1. 「学びて時にこれを習う、またよろこばしからずや」
    論語の冒頭にある言葉です。
    ここから「学習」という言葉になりました。

    若者が年長者から教えを学ぶ。この時点では言葉としての教えです。
    そして次に若者が自らそれを実践し、実体験で理解する。これが習うということです。

    まさに山田塾さんこそが学習ではないですか。素晴らしい!
    匿名人  »このコメントに返信
  2. ピンバック: 匿名人

    • 匿名人さま
      学習の意味を初めて知りました。深く納得しました。そしてお褒めのお言葉に感謝します。嬉しい限りです。コメントありがとうございました。
      山田塾  »このコメントに返信
    • ピンバック: 山田塾

  3. 大学時代の恩師は、「成功は成功のもと」と教えてくれました。小さな成功を体験し、そこから大きな成功へとつなげていくこと。
    また、大学校内で、友人と酔い潰れて倒れていた時、ある先生は、「常にチャレンジャーであれ。迷ったらGOだ!!」と、その場で一緒に飲んでくれて、研究に対する姿勢を話してくれました。
    ちなみに、前者の恩師は、理論上不可能とされていた有機ELの白色発光を、世界で初めて成功させた方です。その白色発光のおかげで、フルカラー発光が可能となり、現在のスマホの有機ELディスプレイや大型有機ELテレビが実現しました。
    もう約30年前の話ですが、今でも昨日のことのように、良く覚えています。
    換金禁止  »このコメントに返信
  4. ピンバック: 換金禁止

  5. 100分の1ミリの精度ですか?
    これぞ匠の技ですね。感服いたします。

    一発台で遊んでいた時のことを思い出しました。
    玉が通るか通らないかのあの隙間に何度もはじき返される。
    無理かなと思いつつスッと入るあの一玉はドキドキでした。
    BC  »このコメントに返信
  6. ピンバック: BC

    • BCさま
      100分の1ミリというととても凄いなというイメージがありますが、人間の感覚はさらに凄いです。それをやってのけてしまうのですから。それにしても昔の一発台のスリルはたまりませんよね!コメントありがとうございました。
      山田塾  »このコメントに返信
    • ピンバック: 山田塾

    • 呆れたさま
      コメントを読んでドキッとしました。それで慌ててググってみたのです。すると100分の1ミリは1.010と表記し、10ミクロンというらしいですね。大間違いをしたかと思いハラハラでしたが真相がわかってかえってよかったです。コメントありがとうございました。
      山田塾  »このコメントに返信
    • ピンバック: 山田塾

  7. 桁一つ足らんけど? それで良いんか?
    まぁ今の釘見てりゃ10分の1ミリすらろくすっぽって奴ばかりだからな
    そりゃ居座られるわ。雑魚すぎるだろ。今の釘調整レベルって。
    締めすぎ、開けすぎ、って奴。
    呆れた  »このコメントに返信
  8. ピンバック: 呆れた

    • ミクロン単位の調整が必要だとおっしゃるのか。
      仮にミクロン単位で調整してどうやって測定するのか。
      あなたは玉ゲージを使ったことありますか?

      こういうスマートフォンで検索はした結果をでさも知ったような口を効く輩が若者には多すぎます。
      しかし、経験者にはそんな知った様な付け焼刃だとは直ぐに見破られてしまいます。
      私は若い頃に旋盤を使っていた事があるから、0.1mm、0.01mm、0.001mmの感覚を体で知っています。
      今考えるとあれはあれで良い勉強でした。

      今の若者はスマートフォンで漫画ばかり読んでいるのでその様な勉強する機会もないのでしょう。

      年長者の体験を元にした知識とは、インターネットの検索結果とは比較にならない重みがあるものです。
      サファイア  »このコメントに返信
    • ピンバック: サファイア

      • 匿名人さま
        私が釘を触り始めたのが四十年前のことです。その頃は板ゲージよりも玉ゲージによる調整を上司から強いられました。そこで徹底的にコンマ〇〇ミリの調整を日常的にしていました。もっとも後に釘幅測定器、いわゆるノギスですね。それを用いると正確にミクロン単位で測り知ることができました。スタートチャッカーの根元が約11ミリ、盤面から出ている釘の長さは約17ミリ、そして手前の幅広の部分を仮に12ミリで調整したとするとその台形の中に約11ミリのパチンコ玉がどれほどの確率で入賞するのか。いくら計算しても答えは出てきませんでした。結局自分の感覚でしか調整できないのですね。だから己の感性を磨くことをしないと釘が上手くならないというお話でした。
        コメントありがとうございます。
        山田塾  »このコメントに返信
      • ピンバック: 山田塾

        • 呆れたさんのおしゃるには、
          「桁一つ足らんけど? 」とのことなので
          0.01mm単位ではなく、
          0.001mm単位(ミクロン単位)で調整が必要だと言うことだと、私は読み取りました。

          私の持っている器具は0.01mm単位でしかないですが、ミクロン単位の測定具とは時代の進歩を感じます。
          サファイア  »このコメントに返信
        • ピンバック: サファイア

  9. 技術は大事だし、精緻な技で弄ばれるのは楽しい。据え置きに期待して昼前に顔を真っ赤にしながら撤退するのも楽しみの一つ。

    それとは別に、昔は大胆な力技もあった。甘すぎてどうしようもない機械をなんとか使えるレベルにしたり、辛すぎてどうにもならない機械を遊べる程度にする。年2回の新装ではずれを引いても、意地でも使い倒そうという意志と、娯楽を提供しようという矜持があった。

    翻って今は、新台を入れても甘すぎて使えない、辛すぎて云々、初動がどうのこうの。具体的にバジやカツ丼は電源を落として即撤去、カイジ小当りやモモキュン小当りは激辛のまま放置。昔なら余裕で使いこなせる程度なのに、無駄な入れ替えをして客を苦しめる。

    現在進行系だが、先週導入の某機種はどうするのか。現状では回らないまま放置の店が多数だ。ボーダーライン千円1.3程度の台で、千円0.3~0.6の店が多い。仕様的にかなり金が入るから、一時間で一万円以上負ける調整だ。明らかにメーカーの失態だが、手を入れずに放置する店は、娯楽を提供するという使命を忘れている。

    精緻な技は素晴らしいし、それを伝えることは重要なこと。でも、その技術を活かせないのでは意味がない。遊べる範囲の調整を考えないパチ屋と、そうさせるメーカーに問題がある。

    勝ったり負けたりならパチンコは楽しいのにね。
    とんかつ  »このコメントに返信
  10. ピンバック: とんかつ

  11. とんかつさま
    お久しぶりです。技術を伝えることができてもそれを現場で活かせないのでは意味がない。そこに私のジレンマがあります。冒頭の「精密な技で弄ばれるのは楽しい」のお言葉。まさにその通りだと深く共感します。そして現実を見ると少し悲しくもありますね。今、コメントを読みながら色々なことが頭をよぎります。大変貴重なコメントありがたくいただきます。
    山田塾  »このコメントに返信
  12. ピンバック: 山田塾

  13. 懐かしいですね(^-^)
    私が業界に入ったのは平成に年号が変わったばかりの頃ですね。
    設置台数333台(内スロット75台)でコンスタントに月粗利7000万以上上げる繁盛店で系列店もかなり優秀な会社でした。
    しかしながら役職者は武道派ばかりで各営業所に設置されていた当時最高峰のDK電機さんのHC7500VRスーパーだったか?は宝の持ち腐れみたいな感じでした・・・
    なので私は営業に関しては全く誰かに物を教わった記憶は有りませんでしたね(^^;
    ハンマーは多台数の新台のバラ釘を揃えるのは大振りなステンハンマー、通常調整用は自分用にカスタマイズした小振りの軟鉄製を使用しており、玉ゲージは00&02と02&08の二本を使っていましたね(*´ω`*)
    地元に到着するのが大体18時少し前、銭湯サウナが22時半までですので約2時間ほど掛かるとしてパチンコに費やせる時間は1時間半ほど(^^;
    最近は超源ライトの1万円勝負がデフォになっておりますがパーソナル&会員カードにて私的には全てが良い塩梅ですねw
    時間内に2万個まで狙えるとは諸問題はひとまず置いておいて良い時代になった物です(^^;
    もと役員  »このコメントに返信
  14. ピンバック: もと役員

    • もと役員さま
      ハンマー二丁持ちですね。私の上司もそうでした。懐かしいです。軟鉄にヤキを入れた黒っぽいハンマーに憧れたものです。私は駆け出しでしたので真鍮製のものを持たされました。釘の頭や役物に傷をつけてこっぴどく叱られたものですからそれも当然ですね。今日もコメントありがとうございました。
      山田塾  »このコメントに返信
    • ピンバック: 山田塾

  15. ま、今は無駄だろうな。
    ホールは、徹底的に辛い調整をして、どれだけ差玉、差枚数が店のプラスになっているかだけ。客に勝たせる気は一切なし。根本的に客が客が勝てない仕様だから。
    客にとっては、その1台の生涯稼働において客のプラスになっているかだけ。永続的に客が金儲けができるかだけやな。根本的に客が客が金儲けが出来ない台、ホールは、徹底的に淘汰されていくのが一番客にとってはプラスやな。
    匿名希望  »このコメントに返信
  16. ピンバック: 匿名希望

  17. 新海物語くらいまでか
    メーカーが設置の際
    率に合わせて叩いて納品していくのが
    あたりまえでしたね
    叩けない営業が売るパチンコ時代になって
     »このコメントに返信
  18. ピンバック: ●

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