設計事務所の社長が通っているスポーツジムで何度か顔は見かけたことがあるが、ひょんなきっかけから話をするようになり、すっかり意気投合したのがホールオーナーだった。
オーナーは相手が設計事務所の社長だと分かり、ホールの改装案件を相談した。
内容的には喫煙ルームの新設とカウンター周り、男女トイレの全面改装だった。設計事務所の社長はホールの仕事は初めてだが、工事を請けることにした。
現調に向かったのは設計担当とデザイナーら4名。ホールの仕事は初めてだが、彼らのイメージからするとパチンコホールは儲かっているイメージしかなかった。壁や床に大理石を張り巡らすぐらいのホールもあったので、予算もくれるものと思ったら、当てが外れた。
ホールの予算はかなりシビアなものだったが、ホールの要望を聞いて見積もりを出した。
その結果工事見積は3000万円になった。
これに対してホール側の担当者からは「高い!」となった。出せる予算は2000万円。
「ウチだけじゃなくて、業界全体がキツイので、2000万円でやって欲しい」
設計事務所の社長は「損をしないのなら受けろ」の指示だったが、1000万円もの開きがある。とても歩み寄れる金額ではない。設計事務所にすれば適正利益しか載せていないので、値引きしても100万円が限界だった。
歩み寄るには使う設備や材料を落とすしかない。これをホール側がどう飲むかだ。
ホールの購買部は中には、取引額が大きいので強気に出るケースもある。購買部にすれば、いくら値引きさせるかが担当者の評価につながるので、業者は泣かされることも少なくない。
見積もりの攻防は800万円で決着した。
当初はホール側の要望をすべて盛り込んだ結果が3000万円に跳ね上がったが、グレードを落とし、デザインもやり直した。
女性トイレにでっかい鏡を据える予定だったが、コストを優先して6分の1のサイズに変更された。

※コメントには必ずハンドルネームを入れてください。匿名は承認しません。コメントがエントリーになる場合もあります。