アップルは、製造を海外に委託し、自社で工場を持たない「ファブレス経営」を採用していた。ジョブズが言わんとしていたのは、製造はプロに任せ、自分たちは企画やデザインに集中するのが最善だということだ。
実際、ファブレス経営のメリットは計り知れない。初期投資が抑えられるし、市場の変化にも柔軟に対応できる。アップルはこのモデルで成功を収め、日本の企業にも影響を与えている。ユニクロや任天堂、そしてフィールズなども同様にファブレス経営を導入しているのだ。
さて、このファブレス経営の波が、今やパチンコ業界にも押し寄せている。かつては年間400万台も売れていたパチンコ台だが、現在では97万台にまで落ち込んでしまった。これは一大産業が抱える深刻な問題である。
台数が減少すれば、何が困るか? そう、工場だ。工場は設備が立派であればあるほど、稼働率が下がるとお荷物になる。工場というのは、ただ建っているだけで維持費がかかる。工場のためにパチンコ台を作っているのか、パチンコ台のために工場を持っているのか、わからなくなる事態だ。
この状況に対応するため、複数のパチンコメーカーが手を組み、工場を削減する計画が進行中だという。そこで6〜7社が株を持ち合い、ホールディングス制に移行し、工場を1〜2か所に絞り込むことで、コスト削減と効率化を図る試みだ。実際、メーカー関係者の中には「工場を持つ時代は終わった」と断言する者もいる。
「日本の人件費はまだそんなに高くないが、これが上昇すれば、もはやメーカーが工場を抱える意味はなくなるだろう」とは、その人物の言葉だ。確かに、アップルのようなグローバル企業が早々に工場を手放し、デザインとマーケティングに集中する道を選んだのは賢明な選択だった。だが、これが日本のパチンコ業界でも通用するのか? それとも独自の問題を抱える業界では異なる解決策が必要なのか?
しかし、業界全体がファブレス経営に舵を切るとなれば、パチンコ業界の構造自体が大きく変わることは間違いない。今後は、技術やデザインに特化したメーカーが生き残り、製造は専業のサプライヤーに任せるという形が主流になるかもしれない。パチンコメーカーがジョブズに倣い、「我々は工場を持たない!」と声高に宣言する日が来るのも、そう遠くはないのかもしれない。

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