景品交換所で現金を受け取ったAさんは、その厚みを感じながら財布に入れずに、履いていたカーゴパンツのファスナー付きサイドポケットに、札束をぐいっと押し込んだ。ファスナーを閉めれば安心だ、とその時は思った。
中央線に乗り込み、帰路につく。乗車時間は30分ほど。勝利の余韻に浸っていると、心地よい疲れが眠気を誘った。気づけば、数駅分は意識が飛んでいた。
最寄り駅に到着すると、Aさんは改札を抜け、いつものようにタクシー乗り場へ。自宅まではワンメーターの距離だ。車内で「いやあ、今日はついてたな」と思い返し、到着後、運転手に運賃を払おうとカーゴパンツのファスナーを開けた――その瞬間、心臓が凍りついた。
ない! 札束が、影も形もない!
慌ててポケットの奥まで手を突っ込む。隅々まで探しても紙の感触はない。真っ先に浮かんだのは「スリにやられた」という考えだった。
Aさんのポケットはファスナー付き。中身を抜き取るには、かなり大胆な動作が必要だ。
さらに考える。もしスリだとすれば、Aさんが大金を持っていることを知っていなければ、わざわざ狙わないだろう。だとすれば、景品交換所から尾行されていたことになる。
交換所周辺でAさんの行動を見張り、ポケットに入れる瞬間を確認し、その後電車内で実行に移した――そう考えると筋は通る。
しかしもう一つ、もっと単純な可能性も頭をよぎった。もしかすると、ポケットに入れたつもりで、実は落としてしまっていたのではないかということ。
換金後は、財布の中身が急に重くなる。実はこの瞬間こそ、真のリスクが始まる時間帯だ。「換金所から家に着くまでがワンセット」という格言がある。
以下はそのための注意事項だ。
現金は必ず財布かバッグの内ポケットへ
ズボンのポケットや上着の外ポケットは盗難・落下のリスクが高い。ファスナー付きでも安心はできない。
尾行に注意
換金直後は周囲を観察し、不審な視線や距離を取られないかを確認する。気になるときは立ち寄り先を変えるか、ホールに戻って相談する。
電車やバスでは居眠り厳禁
混雑時は特に危険。財布は体の前で抱えるか、バッグを胸に抱えるようにする。
防犯グッズの活用
エアタグやGPSタグを財布やバッグに付けておけば、紛失時の発見率が上がる。
勝った金額を家に持ち帰ってこそ、本当の「勝ち」。最後の詰めが甘ければ、ホールでの努力も水の泡になる。
いずれにしても、Aさんの13万円は戻ってこなかった。尾行だったのか、不注意だったのか、その真相は分からない。だがひとつ確かなのは――大金を持ち歩くとき、気の緩みは致命的だということだ。次からは財布にきちんと入れ、エアタグも付けておく。Aさんはそう心に誓った。
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