パチンコ日報

ニュースにならないニュースの宝庫 

第9話 終焉 ①

幻想
 
八年もの間連れ添った男に玲子は特別な感情を抱いたことはなかった。判を押されたような変わりばえのない毎日にいつも目の前に登場してくる男。ただそれだけの存在だった。決して悪い男ではない。むしろ玲子にはとても優しかった。

だが彼女は自分の人生において幸せな結婚生活だとか、豊かな生活などとはほど遠い処に自分の身を置いていた。故にその男の存在価値は皆無に等しかったのである。
 
そんな折の事である。田中秀樹という男が自分の歩む暗く、のっぺるりとした道に突如として現れたのは。顔立ち、風貌、声とどれをとってもそこら辺にいそうなぱちんこ屋の店員。普段ならそんな男を気にするはずもない玲子は自分の心の中での変化に気づいた。

この男の何かが自分の心のどこかを刺激している。彼女自身はそれが何なのかを知ることができない。恋心とも違う。だがそれに近いときめきを感じた。一生を何も求めず生きていこうと決めた玲子は大いに戸惑った。しかし彼女は得体のしれない感情を抱きながら秀樹の一挙手一投足に関心を寄せている自分が嫌いではなかった。

秀樹が入店してから数ヶ月たったある日のこと。玲子は食堂で終礼のミーティングを終え、しばらくたってからカウンターに財布を置き忘れたことに気がついた。ホールは閉まってもう誰もいないだろうと思いつつも、念のためスタッフ専用の通用門を開けてみた。鍵は掛かっていない。拍子抜けするほどの軽さで扉がすっと開く。するといつもなら真っ暗な状態であるはずのホールに人のいる気配がする。

「誰かいるんですか」

恐る恐るホールに向かって声をかける。

「あ、はい。ちょっとやり残した仕事がありまして」

声の主は秀樹だった。玲子は急に胸が高鳴るのをはっきりと感じた。

「秀くんだったの。どうしたの、こんな時間まで」

「いや、明日の早番の人出が少ないもんで。朝の掃除が大変だからレール掃除だけでもしておこうと思いまして。玲子さんこそどうしたんですか」

はにかみながらの秀樹の問いに玲子はそれには答えずしばし茫然とする。
 
なんなのだろう。この愚直ともいえるまっすぐな姿勢は。夜遅くまで一人で清掃をしているにもかかわらず彼の瞳は輝いている。そしてその声に一点の陰りも見えない。この瞳はどこかで見覚えがある。玲子ははっとした。父だ!一瞬にして今まで抱き続けた感情の正体が解き明かされた。

「なんで、なんでそんなこと一人で。しかも今しなけりゃいけないのよ」

玲子は胸の奥からこみ上げてくる感情を抑えることができなかった。今までずっと忘れてきた父の面影。もう思い返すまいと心に固く誓った家族の顔が秀樹を見ていると浮かんでは消えていく。中でも父の素朴なたたずまいは玲子が最も愛してやまないものであり、その姿が秀樹を通じて今鮮明によみがえったのである。

泣き崩れる玲子。何もできずにおろおろするばかりの秀樹。二人の悲しくも険しい恋の物語はこうして始まったのである。
 
むせび泣く玲子のうしろ姿を秀樹はじっと見つめていた。そして玲子の口から発せられた言葉の意味を必死になって探ってみた。彼は家を出てからの二年間、他人から自分を思いやる言葉をついぞ耳にしたことがなかった。考えてみれば『カギっ子』と冷やかされた小学校の時分から自分に対して本気でものを言ってくれる人がいなかった。それを思い返す秀樹の心の中でも何かが崩れ落ちた。
 
必死になって今までこらえてきたもの。それはこれ以上落ちこぼれてはいけないという最後の砦であった。楽な生き方はいつでもできる。しかしこの職場で楽をすればあっという間に自分が奈落の底に落ちてしまうのを秀樹は今までの経験で悟っていた。だから彼は必死になって自分の心を閉ざし、同時に人の顔を極力見ないようにしていた。

人の顔を見れば挨拶の一言もしなくてはいけない。人との会話はなぜか心が荒む。地べたをしっかと見つめ他人のすることには一切の関心を断ち切り、自分のやるべきことだけを淡々とこなしていく。彼はいつの間にかそんな生きざまを身につけていた。
 
しかし玲子に対してだけは少しだけ勝手が違った。玲子が秀樹に父親の姿を見たのと同じく、秀樹もまた見たことのない母のイメージを玲子に重ねていたのかも知れない。だから今まで玲子を避けるしかなかった。そうでもしないと自分の心が揺らいでしまい、最後の砦を守りきれそうになかったから。
 
秀樹が玲子を見守る時間。それは十分にも満たなかった。しかしその時間に秀樹は今まで味わったことのないやすらぎを感じていた。ただ、見ているだけでいい。自分がこの人のそばにいれるだけでいいと素直に思えた。
 
一方の玲子はこの短い時間の中で取り乱してしまった自分を恥じ、このあとどう収拾をつけたらよいのか必死になって考えていた。自分はどうかしているのではないかとも思った。

目の前にいる年下の青年に対して父の姿を重ねるだけでなく、ほのかに思いをよせ始めようとしている。不思議な感覚は悲しくてせつなくてそれでいて何か満たされた感じのものだった。急に胸が息苦しくなってきた玲子はふうっ、と一つため息をついた。

つづく


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メーカーさん、パチンコ業界三方よしを目指してくれ

スマスロ先行各社はタマ不足から好調なスタートを切った。完売御礼と言ったところだろう。今年はスマパチも市場投入されることを受け、メーカー関係者の間では、スマート系特需は再来年の盆商戦までは続くものと読んでいる。遊技機の認定・検定切れがスマート系への入れ替えを後押しするからだ。

メーカーが危機に陥ると必ず、入替特需という神風が吹く。社会的不適合機、高射幸機の撤去のたびに、ホールは無駄な出費を強いられてきたが、ホールの体力も限界に達してきた。メーカー特需のあおりを食うのはホールとユーザーであることは、遊技人口減少とホール軒数の減少という数字が証明している。

ホールは機械代回収を急ぐあまりに、新台入れ替え時からヌキ営業に走る。そんな営業を続ければユーザーがパチンコから足を洗うのは自然な流れ。残ったのはヘビーユーザーという名の依存症シンドロームたちと時間と小金がある年金生活者。

メーカーだけが入替特需で潤うのもどうかということだ。三方よしという言葉があるが、業界三方よしに置き換えれば、「メーカー自らの利益のみならず、買い手であるホールやユーザーはもちろん、世の中にとっても良いものであるべきだ」ということだが、パチンコ業界は三方よしとはならない悲しい業界だから衰退する。

当初の計画ではスマスロもスマパチの同時期にリリースする予定だった。スマート系が一斉にスタートする方がインパクトもあるが、それではホールの機械代予算がオーバーして、思うように販売台数をさばけない。それなら予算分配のためにリリース時期をずらした方が得策と言うことになったようだ。ホールの購買能力が落ちてきているので、メーカー各社も新台を作り過ぎて、在庫になることだけは避けたい。

「スマスロにパチンコのように確変が付いたらもう鬼に金棒。スロットはATでダラダラ出ることが欠点。パチンコのように時速7万発オーバーのような機械を作ることができる。そもそもスロットで専業が多いのは、時短勝負ができないので、どうしても時間がたっぷりある専業がスロットを打つことになっていた。スロットにも確変が付けば、時間のないサラリーマンでも勝負ができる。スロットにもそういう機能を搭載する時期がきた」(メーカー関係者)と期待を寄せる。

相変わらず射幸性を上げることしか考えていないのをメーカー脳と呼ばせてもらおう。ま、それはホールも一緒で射幸性の上がる機械=売り上げ・粗利が上がる機械しか求めていないのは同類だ。こうして残ったのは依存症シンドロームのヘビーユーザーたちだ。

メーカーに言わせれば、ホールの機械の使い方が悪い、と堂々巡りになる。機械代が高いからすぐに抜くのか、ヘビーユーザーに甘い汁を吸わせないようにするからなのか。三方いいところがない。


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客が求めているのは回る台ではなく勝てる台だ!

日報のコメント欄にはかつて名物コメンテーターがいた。その名はア太郎さん。日報の草創期に長文コメントを寄せてくれていた。そのア太郎さんの消息が最近分かった。結婚相手が大規模農場の方だったので、今は業界を離れ、農業に従事しているようだ。

ア太郎さんの秀逸なコメントは時代を的確に捉えていた。10年以上前のコメントを今読み返しても視点が面白い。

ユーザーは回る台を求めている、という意見にも真っ向から切り込む。

以下本文

回る台を求めているのに、どうして新台が満台になるのでしょうか?

アグネスラムと沖縄2を半々で設置した場合、沖縄2のクギの方が開いてたとしてどちらが埋まりそうでしょうか?

ここに書き込みしてる方はもしかしたら沖縄2に座るかもしれませんが、実際のホールに何%いるでしょうか?(アグネスはやくも微妙な稼働になってきてるみたいですがw)

「ユーザーが求めるのは回る台」という結論づけは早計だと思う。

回らなくても京楽の機種などは長期稼働の実績が出ている。はじめからそういう設計でリーチなど考えて作っているから。ゲーム内容にあった出率設計なのかどうかが問題。実際の営業で使用するスタート回数で保留1~2での図柄停止秒数やリーチ頻度のバランスが重要。

回っても当たらない、勝てないでは逆にストレスになる。

千円で25回回るけど勝てない台と15回でギリギリ勝てる台なら後者を選びますよね。回る台を打ちたいのではなく勝てる台を打ちたいというだけでは。

それなら問題は「回らない」のではなく「勝てない」こと。

原因はMAXタイプや確変率重視のスペック。9人負けて1人大勝ちするような図式が原因。

回る=ボーダー近く回るという定義なら、ファン離れは等価営業が原因。等価営業が多数派になったのは、回らなくても勝ちたいというお客様が多数派なことを象徴しているのではないでしょうか?

ホールの立場から素直に言えば、当然、回したい。勝てなくて、楽しめもしなくてリタイアしていくお客様を減らしたい。

それが現実なかなかできない主な理由は機械費。

機械費がかかる理由は「囚人のジレンマ」。

競合店との関係での機械入替とは、自分がやらなくても相手がやることはわかっているからやる。(今のペースで)やってもファンが減るので損をする。

しかし、やらなかったら相手に取られるので大損をする。お互いやらなければお互い得をするのだが、その選択肢は取れない。

自分がやらなくても相手がやるから。脱落するか、違う路線で戦うか。

その場合、ナンバーワンにはなれなくなる。

ナンバー2でもいいじゃない、ってお店はすでにやっているかと思います。

ただひとつ言える事は通常一度落ちたら急激に落ちていく。浮上するのに大きな労力と金、時間を要する。自店もどっちかというと機械費抑えてなるべく還元(店側の視点での還元にすぎませんが)でもあまり客数増えない(TT)苦しい戦いをしています。

競合店の入替で動いてしまうお客様に悔しい思いをしているのも事実ですが、工夫して勝負することが逆に楽しかったりもする。

常連のお客様に感謝!



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川下が川上の言いなりになっているのはパチンコ業界ぐらい

2022年業績が良かったメーカーは株価に反映される。

フィールズは、年初は511円が年末には2700円、SANKYOは3015円が5380円、ゲームカードは1041円が2377円だった。エヴァ効果やスマート系ユニットが業績を押し上げた。

そして、今年2023年の株価予想するのは証券会社系のシンクタンク関係者。

「業界天気図ではパチンコ業界でもホールは雨のち曇りだが、メーカーはずっと晴れ。メーカーだけが一人勝ちする1年になる。しかし、メーカーだけが儲かる歪な構造を是正しなければならない」

メーカー株は買って損にはならないということのようである。今年はいよいよスマパチも登場して、いよいよスマート系元年を迎え、パチンコメーカーにはさらなる追い風になることが予想される。

スマート系にホールが注目するのは出玉性能以外にも、大幅な人員削減ができるためである。たとえば、300台~500台クラスのホールでも、3人ぐらいで回せることが可能になる。従来の半分以下の人数で回すことができるので、3人減らせば1000万円ぐらいの人件費が節約できる。その分、機械代に投資できる、というわけだ。

実際、スマート系が出揃ってくることを受けて、来年にはスマート系専門店で300台クラスの新店を出す計画もあるようだ。さらに、補給工事が不要な分、出店コストも抑えられるために、スマート系での店舗倍増計画を立てている法人もあるようだ。場所も駅ビルの中とか選択肢も広がっている。

「スマート系で、メーカーもホールもコケるわけにはいかないので、今年1年はメーカーにとっても、ホールにとっても勝負の1年になる。スマート系に切り替わる3年間で遊技人口1000万人も夢ではない」とメーカー関係者の鼻息も荒い。

その一方で、前出のシンクタンク関係者は、メーカー独り勝ちの歪な構造是正に向けてこう提言する。

「川下が川上のいいなりになっているのはパチンコ業界ぐらい。ホールはもっとメーカーに対してものを言わなければならない。ダイエーの中内さんは流通革命、価格破壊を旗印に松下電器と大喧嘩した。そもそもメーカーが価格決定権を持っていることに異を唱えた」

全日遊連でも機械価格については問題視しているが、メーカーと大喧嘩することはない。機械がなければ営業できないと思い込んでいるので、あまり強く出ることができない。一枚岩になって値段交渉ができない組織とも言える。機械代で経営が圧迫されているというのに。

ホールはメーカーに機械代を支払うために営業しているようなものである。安く、長く使えて、飽きない機械が理想だ。


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2パチ、10スロが再注目される年になる

4円客を1円にドロップアウトをするのを食い止めるためと、1円客をステップアップさせる2円パチンコが登場したのは10年以上前になる。論理的には2円パチンコの重要性は分かるのだが、挑戦しても中途半端なのか、はたまた需要がないのか、2円パチンコの成功事例というのはあまり聞いたこともなく、広まることもなかったのが実情だった。

しかし、この10年で状況はだいぶ変わってきた。低貸し専門店から廃業にどんどん追い込まれるようになった。

「稼働の低い平日はアルバイトスタッフもいらない。というより人件費を払ったら赤字になる。私は正社員なのですぐに首を切られることはないけど、明日は我が身」(低貸し専門店の関係者)というように 高コスト体質のホール運営に、低貸しはビジネスモデルとして破綻しかけている。

2023年は1パチ客を2パチに、5スロ客を10スロに引き上げて、売り上げを倍増させることに専念する年になってくることが予想されている。実際、2パチ、5スロに成功しているホールが地方にあるようだが、残念ながら詳細までは伝わってこない。

1円客を2パチに引き上げるのは比較的簡単だというデータもあるようだ。とにかく、1円に客がいる今、やらないと手遅れになってしまう、ということだ。

では、どうやって2円に引き上げるか?

大人気のエヴァは、わざわざ1パチにまで落ちてくることはないが、それを2円で打たせる、ということ。

「2円が失敗したのは、時代が合わなかっただけ。4円でドロップアウトしそうで、1円には抵抗があったお客さんが、今なら2円だったら留まってくれる。2円に力を入れ始めたら稼働も上がり始めている。2円をバカにしていた業界人も、2円をバカにできない時代になってくる」(コンサル)

これまでの失敗はレートが4円、2円、1円と3タイプあったから中途半端になって、2円が活かされることはなかったが、2円専門にすれば中途半端さからも脱却できるというもの。後は「機種の鮮度の高さ」、「遊べるスタート回数」を2円のレートに合わせて対応する。

低貸し専門店で心中するなら2円で挑戦してみるしかない。ただ、今の低貸しをそのまま2円にレートだけ引き上げても成功することはない。



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